会計士が「気候変動リスクの開示」に強くなりたいと思った時に読む本【厳選5冊】

みなトン
みなトン
「「気候変動リスク」について開示が義務化されているのは知っているけど、気候変動リスクについて、詳しくなるには何を勉強すればいいの?」

の疑問にお答えいたします。

会計士が「気候変動リスクの開示」に強くなりたいと思った時にまず読んでみるといい本【5冊+α】

気候変動リスクの開示について詳しくなりたいという方。なによりもまず、TCFD提言の理解を深める必要があります。

なぜなら、世界も、日本の多くの企業もTCFD提言に沿って開示が進められているから。

・ロンドン市場のプレミアム市場では、2021年よりTCFD提言に沿って開示が義務化されていること
・TCFD提言に賛同している日本企業は日に日に増加していること(2022年4月25日時点で821社、出典:日本コンソーシアム)


なので、TCFD提言の理解を深めてくれる本を中心に紹介していきます。

  1. 【TCFD】TCFD開示の実務ガイドブック
  2. 【TCFD】ESG情報開示の実践ガイドブック
  3. 【TCFD】気候変動時代の「経営管理」と「開示」
  4. 【戦略】BCGカーボンニュートラル実践経営
  5. 【気候】気候危機がサクッとわかる本
  6. (参考)地球にすめなくなる日

1:TCFD提言を理解する本

『TCFD開示の実務ガイドブック: 気候変動リスクをどう伝えるか』
編集: KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン


そもそも、皆さんTCFDって知ってますか?

TCFDとは、G20の要請で、金融安定理事会(FSB)が、気候関連の情報開示や金融機関の対応をどうするか検討するために設立した気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)のこと。(委員長:マイケル・ブルームバーグ氏)

このTCFDが提言した、気候関連の情報開示の枠組みのことを「TCFD提言」と呼んでいます。

Memo

・2015年12月:金融安定化理事会(Financial Stability Board)にて設立
・2017年6月:気候関連の情報開示の枠組みを提言(以下、TCFD提言)

TCFDについては、別記事で簡単に解説しておりますので、こちらも参考まで。


TCFD提言については、日本語版がサステナビリティ日本フォーラムさんのHPに掲載されているので、こちらをまず。

あと、「提言」以外に「勧告」「付属書」も一緒に掲載されているので、併せてチェックください。

さらに、金融庁が、開示の好事例をまとめてくれているので、実際の開示(2021年)を確認したい場合には、こちらも。

・・・

なんか多くない?

そう思った方。そうなんです。すべてをチェックするとなると、まあまあのボリュームになります。

なので、実は、最初から原書行くと、挫折する可能性があるので、一旦、本で理解を進めてからがおすすめです。

そんな時におすすめの本が、こちら。

TCFD提言の内容について整理してくれているのはもちろん、現在の気候変動リスクに関する動向や、今後の開示の行方についても言及してくれています。

簡単すぎず、また難しすぎずの最初の1冊に丁度いい本。

是非。

2:TCFD提言以外の枠踏みを理解する本

『 ESG情報開示の実践ガイドブック』
著:藤野 大輝


実は、気候変動に関する財務情報の枠組みは、TCFD提言以外にも複数あります。

GRIスタンダード、国際統合報告フレームワーク、SASBスタンダード、CDP、CDSBフレームワークと。。。

では、質問です。

各フレームワークの「違い」ってわかります?

・・・

という時は、こちらの本。

各フレームワークの対象範囲の図解が非常にわかりやすい。

そして、なによりTCFD提言以外に触れることで、よりTCFD提言の理解をより深めてくれる本です。

しかも、この本IFRSの動きについても記載してくれていて、特に、国際的なサステナビリティ報告に関する動向もまとめてくれているので、会計士にとってはありがたい情報だと思います。

あと、巻末に気候変動に関連する用語集が載っているのですが、これも地味にありがたいです。

いろいろありがたい本なので、是非。

3:TCFD提言をより深く学べる本

『気候変動時代の「経営管理」と「開示」』
著:後藤 茂之 , 鶯地 隆継


こちらは、すでに紹介した2冊よりも、もう一段階踏み込んだレベルまで書いてくれている、上級者向きの本。

例えば、物理的リスクのうち、急性的リスクと慢性リスクがあることは、当然上記2冊にも記載されています。

が、この本は、そのリスクを評価する具体的な評価モデル(応用一般均衡(CGE)とモデルと計量経済モデル)まで、説明してくれているのです。

そういう意味で、辞書的な存在かな。

といいつつ、実は本書の前に、著者は、2020年3月に「気候変動リスクへの実務対応」を出版しているので、本書が出版される2022年4月までの約2年間に起きている実際の企業の動きをみた上で、TCFD提言の戦略とシナリオ分析の変化、IFRS財団の動き、開示の課題など、変化についても、書いてくれている本でもあります。

なので、逆に言うと、会計士的にはこの1冊で、「開示」という点においては、相当学べる本です。

会計士として「気候変動」に関する開示に強くなりたいという方は、見逃せない本だと思います。

4:シナリオ分析を考えるための本

『 BCGカーボンニュートラル実践経営』
著:ボストン コンサルティング グループ


TCFD提言の開示のキモは、シナリオ分析です。

では、実際にどんな風に開示されているのかは、好事例が参考になると思いますが、そのシナリオの記載にいたる前段階には、必然的に企業としての「戦略」が必要なわけです。

つまり、気候変動リスクと向き合うなら、どのようにカーボンニュートラルな経営をしていくのか考える必要があるわけです。

そんな時こそ、戦略立案を生業としてBCGの本。

カーボンニュートラルを経営に落とし込むための戦略の立て方、そして推進していく方法をフェーズ事に分解して記載してくれている、アクションにフォーカスした本

戦略を立案するような経験・機会が少ない会計士こそ、一度は目を通した方がいいと思います。

もちろん、すべての企業が書いてある通りに行動しているわけではないと思うし、これを読んだから戦略が立てられるようになるのかというとそうではないと思っています。

でも、戦略を立てるために、クライアントが、どんなことを準備して、どのように戦略をたて、そしてどのように実行していくのかを理解することで、クライアントが実施していることが、よりイメージしやすくなると思います。

あとは、何より、自分が戦略を立てる立場にたって読むことで、読み終わった時に視野が変わると思いますよ。

是非。

5:「気候」の知識を学ぶ本

『Newton 別冊 天気と気象の教科書』


いままで、気候変動に関する「開示」特にTCFDにフォーカスして紹介してきました。

・・・が、いくら読んでも理解が深まらなかったことが。

それは、「気候」に関する知識です。

地球温暖化で、「気候」がヤバいといいつつ、肝心かなめの「気候」に関する知識が。。。

そんな時は、こちらの本。

そもそも、雨の降る仕組みって知ってます?

そんな、雨が降るメカニズムや雲の正体、気圧、気象と災害など、言われればなんでだろと思う疑問を教えてくれます。

当然、異常気象と地球温奪還の脅威についても、教えてくれます。

2015年にニューデリーで、最高気温が45度に達して、道路が溶けてしまったこと

世界的に、大干ばつが起きている一方で、ハイエンで発生した風速が秒速67メートルを超える「スーパー台風」や、西ヨーロッパでは豪雨が発生して洪水が発生していることなどなど

「気候」について、あまり勉強したことが無い人であれば、へーということ満載な本だと思います。

ちなみにこの本は「Newton」ですが、小難しい言葉は使用されていないので、その点は安心してください。

で、この本を読んでいて思ったことが。

会計士も「気候」に関する知識が必要なんだということ。

気候変動について、世界全体で「開示」をしていく時代になっているということは、「気候」についても詳しい会計士が社会として今後より求められると思っています。

じゃあ、何を学べばいいか。

今必要と思われることを本で学ぶことは、必要な情報が明確なため、本などから学びやすいと思います。

しかし、「気候」という広範囲な知識を得ることを目的としている場合には、学問として学ぶ方が、学びやすいと思います。

会計士という資格勉強をした方であればわかりますかね?

そう、「気象予報士」の資格です。資格勉強というのは、一定程度体系づけられているため、その分野を学ぶという点においては非常に優れている勉強法だと思っています。

えっ?と思った方が多いでしょう。

でも、やはりいるんですよね、すでに世の中には。会計士と気象予報士のダブルライセンスの方が。

「脱炭素経営の基本と仕組みがよ~くわかる本」の著者、吉川武文氏。
しかも、この方は、エネルギー管理士の資格もお持ちで、宇宙飛行士に2回挑戦している異色の経歴を持っております・・・


個人的には、会計士の保証の範囲が変わってきたら、会計士試験に「気候学」という科目が増える日が来るんじゃないかななんて思ってますw

とはいいながら、実は気象予報士の合格率って5%程度(かなり低い‼)でして、さすがに独学では厳しいと思うので、仕事をしながらの勉強であれば、ユーキャンをご利用ください。

ユーキャン:気象予報士

でも、資格勉強は会計士でお腹一杯という方は、大学受験の「地理」を学ぶのも一つだと思います。

世界の人口や産業、そして気候との関係性について、学ぶのには、地理の勉強もすごく役立つと思っています。

使えるものは、なんでも活用するのが鉄則。

【スタディサプリ】動画授業で苦手を克服


あと「地理」について、最強の2冊を紹介している、こちらもどうぞ。


気候変動時代にあった知識とキャリアをこれを機に考えてみてはいかがでしょうか。

最後に

開示が義務化されたことがきっかけで、気候変動リスクについて勉強しようと思った方が多いと思います。

私もその一人です。

きっかけは、それでもいいと思っています、というか私がそうなので。。。

でも現実は、この本の題名のような状況に、刻一刻っと迫っています。


地球に何が起きていて、そして、これから何が起きそうかをより、イメージできると、ただ単に、「開示」が必要というレベルではなく、本当に、まずいかもと考え方を改めさせてくれる本です。

現実を知ると、開示の重要性を改めて実感すると思います。

こちらも併せてどうぞ。

【厳選5冊+α】


(プラスα)


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