監査人がAI・電子化で、空いた時間にやるべきこと

みなトン
みなトン
「AIや調書の電子化により生み出された時間に何すればいいですか?」

という疑問にお答えしたします。

監査調書が電子化されたことや、最近話題のAI導入により、さらに時間が短縮される可能性があります。では、その削減された時間でやるべきことは何か。

それは、理解力・説明力の向上と、視野を広げる工夫をすることだと思っています。

英語じゃないんですかと言われそうですが、それは時間外でお願いします。

理解力・説明力の向上

理解力

監査調書は電子化され、ゼロから監査調書を作るということは、ほとんどなくなっていることでしょう。では、前期調書の内容をちゃんと理解し、説明できますか?

考えている内容を、全て文書に落とすことはなかなか難しいことです。やはり行間があるんですよね。
だから、最初に監査調書を作成した人の考えを、全て理解することはそもそも難しいのです。

ということは、ちゃんと理解して監査調書を使用していないリスクがあります。それを無くすためにも、前期調書を適切に理解するということが、非常に重要なプロセスです。また、この調書をAIが作るようになるとするとなおさら、理解する必要があります。

で、その理解力を高める方法として、おすすめなのは、「一人株主総会」です。

一人株主総会とは、文字通り、一人で株主総会を開催し、一人で説明することです。
具体的には、クライアントの株主から、なんで、その手続きで大丈夫と思ったんですかという質問に回答する株主総会です。なかなか、シビアな状況です。ただ、会計士の責任というのは、ある意味そういうことですよね。

で、説明してみると、案外知識不足により説明がスムーズにいかないことや、ロジックが???で説明ができないところがあるもんです。しかも、説明の順番を変えた方が、説明しやすかったりします。

実は、私は上司にレビューされることを極端に恐れていた人でした、今でもそうですが。
それは、間違えることが嫌だったり、何も考えていないと言われることや、レベルが低いと思われることが嫌というのが主な理由。

で、解決策を模索しているときに、『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』の”一人授業”に出会ったのがきっかけです。この本は、主に勉強方法について書いている本ですが、勉強を、聞く→考える→教えるの段階があると考えており、その教えるの段階でおすすめしている方法が、一人授業というものです。学んだことを、教師になったつもりで教える授業をする勉強法。

学んだ内容を本当に理解しているかどうかを確かめてるために、そして学びを真に成熟させるために「教える」 ~一部省略~ は欠かせないのです。

それを文字って、私が勝手に一人株主総会と言っています。余談ですが筆者は、自室に黒板とチョークを買ってもらって一人授業をしていたみたいですwすごすぎ。

説明力

あともう一つの利点として、説明することに慣れるという利点に、最近気づいた。
若いうちは、あまり説明(アウトプット)する機会が少ないが、インチャージになると、いきなり説明する機会が増える。そのため、説明できる会計士になるためにも、一人株主総会で説明することに慣れておくことは非常にいいと思う。

いきなり、監査役に説明することになったりします…私のことですw
かなりのストレスでしたね、あれは。

視野を広げる工夫をする

ノートに書きだす

私は、上司に終わりましたというのが非常に嫌でした。

なぜなら、レビューされると、これはどうなっている、これは考えた?など様々な視点にから質問されるからです。そして、全然終わってないじゃんと思うわけです。さらに、そう思われているんだろうなと思ってしまうのです。だから、その単語を言うことがすごく嫌でした。

しかも、上司から、森を見ろ‼と言われたことがあります。
いや、もう、その時は、どうやって見ればいいんだよ‼って本当に思いましたね。見れたら見てるよと。

で、思考錯誤の結果、その視点に立つというのは、全体像をとらえるという結論にたどりつきました。
その全体像が広ければ広いほど、高い場所から森を見ることができると思っています。

全体像が見えていないから、自分が終わっているという確信を持てないし、検討に関する自信が出てこないのです。では、どうやって全体像をとらえるのか。

会計処理を検討する際に、思いつく関連事項をノートに書きだす。

えっ、そんなこと?と思った方が多いと思いますが、
私の経験上、これをやっている人はほとんど見たことがありません。

なぜなら、想像するに、

  1. 頭で全て考えることができるから
  2. 気付いた点を調べて終わりにするから
  3. 前期調書で十分と思っているから

①の場合は、大変申し訳ございませんでした。私の言葉は忘れていただいて結構です。

私が思うに、②の人が多いと思っています。気づいた点を調べるということはいいと思いますが、それ以外の点を調べる発想が薄くなります。

一番の原因は、雑多な作業が沢山あり、一番大切な調べる時間に多くの時間を割こうという発想になりにくからです。そして、気づいた点は調べていることから、満足感・やった感を持っていたり、さらに③でもありますが、前期調書でOKだったという事実もあるからです。

ちなみに、ノートは、ケンブリッジノート方眼ノートがおすすめ(参考図書:『マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか』)

これを聞いて調書に書いてないって、大丈夫なの?と思うかもしれませんが、その調書自体を否定しているわけではありません。私が考えている検討すべきことは、見ている調書以外に関連することも、判断をする際に考えるべきであるということを言いたいのです。

例えば、検討している会計処理に関して、税務処理、関連する会計基準、財務インパクト、連結の処理、開示、内部統制との関係、どの部署における取引で、その部署における当該取引の意味、取引先の業界、ファイナンス方法、決済タイミング、など、様々なことを考えることができます。

その全てを記載している調書など、私は見たことがありません。

そして、この検討事項が多く上げられる監査人こそ、優秀な会計士だと思っています。なぜかというと、これこそ全体像を把握していないと上げられないからです。

そして全体像というのは、その範囲は広げることができると思っています。高みを目指している感覚ですね。より高い視点を手に入れる。

でも、最初から全体像が見えている人はいないと思います。なので、その時点で考えられる関連論点を考え、書き出すのです。そして、関連論点についても、どうなるかを考え、また書き出し続けることで、関連事項を増やしていくのです。

でこの全体像の把握という視点は、『速さは全てを解決する』という本から学びました。全体像の把握は、自分の仕事の重要なポイントを考えることで、全体像は見えてくると述べられています。是非参考にしてみてください。

”頭が整理されていると、自分の仕事に関して何が大切か、どの点を押さえておくべきか、
どういう問題が起こり得るか、その場合どうすべきなのかが、普段から読めるようになってくる。”

関連論点の本を買う

といっても、関連論点ってどう探すのよって思いますよね。そんな時は、先人の知恵を拝借するのです。関連しそうな本から、関連論点を探すのが手っ取り早いです。しかも、会計は論点ごとに本になっていることが多いので探しやすいと思います。
これは、別記事にも記載したのでご参照ください。

ちなみに、参考までですが、例えば、上記に記載したファイナンスの関連論点探しだったら『M&Aファイナンス』がおすすめです。

長くなりましたが、以上になります。是非時間を有効に使ってみてはいかがでしょうか。