【厳選7冊】”監査現場で学べない論点”が学べる本(M&A編)

みなトン
みなトン
「M&Aについて、会計士としては会計基準を理解しているだけでいいの?それ以外に何を勉強すればいいんだろう?

の疑問にお答えいたします。

”監査現場で学べない”論点が学べる本(M&A編)【7冊】

何を勉強すればいいか悩んでいる会計士さん。悩んでいるなら、”監査現場だけでは学べない論点”が勉強できる本を勉強してみてはいかがでしょうか。
他にも読んだ方がいい本は沢山あるんだけど、7冊に絞りました。

  1. 【M&Aプロセス】Q&AでわかるM&A実務のすべて
  2. 【のれん】そこが知りたい!「のれん」の会計実務
  3. 【税務処理】税務申告でミスしないための組織再編の申告調整 ケース50+6
  4. 【Valuation】企業価値評価の実務Q&A 
  5. 【カーブアウト】Q&Aでわかる事業再編実務のすべて
  6. 【PPA】M&AにおけるPPAの実務
  7. 【SPA】M&A契約

こちらの本達は、おそらく監査調書には出てこないであろう知見を身につけるための本。
しっかり読もうとすると、一冊一冊がなかなか重たいので、クライアントに関係がありそうとか、興味がある本から選べばいいと思います。

監査に直接関係ないなら、別にいいやという人は、この記事は読まなくて大丈夫。

ただ、これだけは知っておいてください。クライアントから監査人に伝えられている情報は、ほぼ確定した「結果」のみで、そこまでに、多くのプロセスを経ていること。

つまり、M&Aを理解するといっても、監査現場だけでは見えない部分が多すぎて、想像するにしても限界があるという点。

さらに言うと、クライアントはそのプロセスを経験しているで、監査現場でそのプロセスを理解していないのは監査人だけという事実を

では紹介していきますね。

1:【M&Aプロセス】 を学べる本

Q&Aでわかる M&A実務のすべて』
著:G-FAS株式会社


プロセスの話をしたので、プロセスを学べる本

まず、以下の文章を読んで見てください。

「買手サイドでビット案件だった場合、初期的バリュエーション実施後、LOIを売り手に提出、ビットを通過すれば、DDプロセス、そして再度バリュエーションと同時にSPAの交渉。しかも、カーブアウト案件だったら、スタンドアローンイシューの検討、TSA/LTAの締結。さらには、無形資産が多額になりそうであればPPAの検討」

さて、この文章を読んで、自分がM&Aのプロセスをどれくらい理解しているか確認してみてください。理解ができていない箇所があれば、むしろレベルアップのチャンス。是非この本で学んでみてください。

この本はQ&A形式で非常に読みやすく入門書的な本です。とは言いながら、書かれている内容は簡単すぎず、また難しすぎず、さらには網羅的に書かれているので、本当にちょうどいいレベルに感じます。

プロセスのみならず、M&Aのことを最初に勉強するにも非常に良本だと思います。是非どうぞ。

あと、M&Aの世界ではよく略語が使われますが、その一覧も載ってますので、覚えられるまでは案外使えますよ。

2:【のれんを学べる本

そこが知りたい!「のれん」の会計実務』
著:EY新日本有限責任監査法人


会計士なら当然わかると思いますが、M&Aの話をすれば、十中八九、「のれん」の話がでてきますよね。
そこで、質問です。

「のれん」と「超過収益力」って何が違うんですか?

といいながら、これって、意外と難しくないですか?

M&Aで十中八 九 でてくる「のれん」について、理解が浅いわけにはいかないですよね、監査人としては。

答えられなかった人も、大丈夫。

こちらの本で学んでおけば、クライアントから質問されても最初から知っていたように振る舞えばいいのですから。勉強しましょう。

ちなみに、この本にはパターン別の会計処理の解説も載っているので、組織再編に関する会計処理に自信が無い方もこの際に会計処理の整理をしてみてはいかがでしょうか。

3:税務処理 を学べる本

『税務申告でミスしないための組織再編の申告調整 ケース50+6
著:西村美智子、中島礼子、長沼洋佑


質問です。

監査人の皆さん、組織再編行為に伴う申告書の調整って、できます?

組織再編行為に限らず、そもそも税務処理まで正確に理解することって、大変ですよね。

でも、ご安心ください。

ケーズ毎に、ご丁寧に、

①会計仕訳、②税務仕訳、③差は何か、④申告調整

の順番で説明してくれているのがこちらの本。

すべてのケースが、この①から④に沿って記載されているので、自然と申告書調整の考え方を身に付けることができます。

なにより、この記載の順番は会計士にとっては、非常理解しやすいので、税務処理まで学びたい方、是非こちらをご活用ください。

4:【Valuation を学べる本

『企業価値評価の実務Q&A』
著:株式会社プル―タス・コンサルティング


M&Aで誰しもが一番気になるのは、価格ですよね。

そして当然ながら、その価格が財務諸表で表現されるわけですから、監査人としても重要なわけです。

では、価格の妥当性を検討する際に、監査人が見る資料は何か。

それは「株式価値算定書」です。

では、質問です。

フリー・キャッシュ・フロー(FCF)の算定式は言えますか?


ここで、なんで、FCFの式なんて質問したの?と思った方。

それは、株式価値算定=一般的にはDCF法により評価されている ということが結びついていない証拠です。
(注:DCF法が絶対と言っているわけではない点はご承知おきください。あくまで一般論です)

そんな方には、こちらの本がおすすめ。

この本は、DCF法で使われてる変数毎(ベータ、マーケットリスクプレミアム、割引率等)にQ&A形式でわかりやすく説明してくれています。

個人的な意見ですが、株式価値評価に関する知識こそ、監査現場だけでは身に付けることは難しいと思っています。なぜなら、監査チームは、自己監査を避けるため、株式価値評価をしない(できない)から。

つまり、監査チームにいる以上、自らバリュエーション業務に携わることができないので、業務を通じて学ぶことはできません。

なので、一番の近道は、クライアントから開示された「株式価値算定書」があれば、そのレポートの横にこの本を置いて、一つずつ何をやっているのか紐解いていくこと。

大変だけど、やってみてください。一度やれば、株式価値算定書の見方が変わります。

また、クライアントがM&Aをしていなければ学べないのか…と思った方。

大丈夫です。

クライアントから学ぶことができない場合には、自ら学べばいいだけです。そんな時はこちらをご利用ください。

練習問題があるので、自ら学ぶことができます。是非、トライしてみてください。

ちなみに、バリュエーションと言えば、以下の本達が王道なのですが、如何せん上下巻で量も多く、最初からこれに手を付けると途中で挫折しちゃうと思うので、さっき紹介した本で、まずはいいと思っています(経験者は語る)。

がっつりバリュエーションの世界を理解したいという方は、こちらも併せてどうぞ。 

5:【カーブアウト を学べる本

『Q&Aでわかる事業再編実務のすべて』
著:GCA FAS株式会社


もちろん知ってますよね?

2020年7月に経済産業省から、「事業再編実務指針」が公表されていることは。

これは、成長戦略実行計画でスピンオフを含む事業再編を促進するための実務指針が策定され、企業に対応を促す方針が示されたことを受けたもの。

つまり、政府は、より事業再編を実施していくことを推奨しているのです。(事業再編という言葉が分かりにくければ、事業の切り出しをイメージしてください。)

事業再編が増えていくことが想定されるわけですが、では質問です。

事業再編に関するM&Aの論点って何があるか言えますか?

当然ですが、事業再編はかなり秘密裏に進められる内容です。

なのでクライアントは、監査人に言うタイミングを見計らって”突然”来ます。ということは、事前に論点ぐらいは知っておく必要があるのです。

またこの本は、具体的に書いてくれているので、実務をイメージする際にもかなり役立ちます。論点のみならず、実際のイメージを持つためにも、是非ご活用ください。

6:PPA を学べる本

『M&AにおけるPPAの実務』
著:EY新日本有限責任監査法人


M&A実施後に、監査人として関係するのは、PPAですね。

では、質問です。

PPAがやっていることは、無形資産の配分ですが、実際に、どうやって配分しているのか知ってますか?

監査人がPPAで確認する資料は、外部アドバイザーが作成したPPAに関する報告書です。

ということは、Valuationと同様、監査人としてやるべきは、この報告書を読んで、何をやっているのかを理解する。

おそらく、何も知らずにPPAの報告書を読んだ場合、やっていること自体はわかっても、なんでこんなことしているのかまでは、よくわからない可能性が高いです。

それを紐解いてくれるのがこの本。

M&Aが増えている=PPAに出くわす機会も増えている。ということは、残念ながらM&Aを学ぶ際にはセットで勉強しておくべき内容ということですね。

頑張って学んでいきましょう。

7:【SPA を学べる本

『M&A契約』
著:戸嶋 浩二、内田 修平、塩田 尚也、松下 憲


どんな取引も、契約書を締結しますよね。当然、M&Aでも契約書を作成します。

で、通常のM&Aは、重要な契約書のため、外部の弁護士に契約書の作成を依頼することが多いです。

では、改めて質問します。

弁護士により入念に作成された契約書の内容を、しっかりと理解することはできていますでしょうか?

内容を完全に理解する必要があるのかと言えば、監査人としてはないのかもしれませんが、重要な契約については、理解をできる限りするに越したことはありません。

個人的な意見ですが、限られた情報の中で判断をしていく監査は、何よりも「理解」が重要だと思っています。なぜなら、理解できていないことについて、本当の意味での正しい判断ができないから。

その理解をサポートしてくれるのが、知識だとも思っています。知っていることからしか、想像できないので、少なくとも私は…

なので、一定の型があるM&Aの契約書については、詳細まで知らなくても一定程度理解しておくだけでも、非常に価値のある情報だと思います。

なにせ、M&Aが重要な取引にあたらない企業は、ほとんどの企業でないと思います。つまり、M&Aがあったら、それは重要な取引なので、監査人としても十分に理解する必要がある。

つまり、理解力を上げておく必要がある。

レベルアップに近道はなく、一つ一つの条文について学んでいくしかないと思います。そして、その一つ一つの条文に対する、論点が記載例と共に解説してくれているのが、この本なのです。

是非、SPAの理解を大幅にレベルアップさせるために利用してみてはいかがでしょうか。

ただし、何も知らない状態で、この本を読むのは相当重たいかもしれません。なので、最初に紹介した『Q&Aでわかる M&A実務のすべて』の第7章(契約交渉)に、契約書の全体像の記載がありますので、そちらで大枠を掴んでから読むとより理解が深まると思います。

頑張って。

最後に

最初に言った通り、どれも、ボス級レベルで骨のあるやつらなので、読むときには、あまり肩に力を入れずに、むしろオープンな気持ちで読んでみて、疑問を書き出していくようにした方が、長続きすると思います(経験者は語る…)

自らの知見を高め、高い視座から物事を判断できる監査人になりたい方、是非こちらの本で、自分の視野を広めてみてはいかがでしょうか。

【厳選7冊】


(参考)