【コーポレートガバナンス・コード改定】東証の新市場区分変更に伴う重要改定ポイント3つ

みなトン
みなトン
「コーポレートガバナンス・コードが改正されたみたいだけど、何が変わったの?

改正ポイント3つ

22/4月に予定している、新市場区分への再編に伴い、『コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について』が、21/4/7に東京証券取引所から開示されました。

今回の改正ポイントを3つ紹介します。

  1. スケジュール
  2. 独立社外取締役
  3. 開示情報の拡充

ポイント1:スケジュール

今回の改正は、改正の内容も重要ですが、なによりも、スケジュールの意識が大切です。

改定後のCG報告書提出までのスケジュールは、『コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について』に以下の記載があります。

上場会社は遅くとも本年 12 月までに、本コードの改訂に沿ってコーポレートガバナンス報告書の提出を行うことが望まれる。また、プライム市場上場会社のみに適用される原則等に関しては、準備期間等も鑑み、2022 年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後速やかにこれらの原則等に関する事項について記載した同報告書を提出するよう求めることが考えられる。

3月決算を前提とした、おおざっぱなスケジュールは以下になります。

時期 イベント プライム スタンダード グロース
21/6月 定時株主総会後、CG報告書の定期更新
21/12/31まで 改定後CG報告書の提出 ※1
22/6月 定時株主総会後、CG報告書の定期更新 〇※2

※1:グロース市場は、コンプライ・オア・エクスプレインを前提としながらも、コードの適用は基本原則(5つ)のみに限定されているため、原則提出は不要と想定される
※2:提出は、定時株主総会終了後だが、改正後CGコードの適用開始時期は22/4/4から

つまり、時間的に厳しいのは、スタンダード市場に上場予定の企業です。株主総会終了後、約半年改正後CG報告書の提出が必要

もちろん、プライム市場上場予定企業も、スタンダード市場より長いとはいえ、3ヶ月追加の9か月間しかありません。ご留意ください。


ポイント2:独立社外取締役

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】について、以下の修正がなされています。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、上記にかかわらず、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

※取り消し線は現行の記載、赤字は本件改定後の内容を表しております

2名ではなく、1/3になったので、プライム市場上場予定企業は、社外取締役を増員する必要がありそうですね。ただ、増員といっても、今までは、少なくとも2名以上選任すべきだったので、おそらく、追加するといっても1名程度だとは思います。

取締役の人数 必要な社外取締役の人数(1/3以上の人数)
3名 1名(2名以上選任すべきという原則にもとづくと2名必要)
5名 2名
7名 3名
9名 3名

さらに、その選び方についても、「スキル・マトリックス」などを利用しながら、社外取締役のスキルを考慮したうえで候補者を選定することが本改正で明記されました。当然ながら、社外取締役は誰でもいいわけはないですが、今後は、今まで以上に社外取締役を選ぶ明確な理由が必要になりますね。

【補充原則4-11①】
取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

赤字は本件改定後の内容を表しております

ポイント3:開示情報の拡充

【原則2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】【原則3-1.情報開示の充実】に以下の補充原則が、新規に追加されています。

こちら、「補充原則2-4①」は、「ダイバーシティ」、「補充原則3-1①」は「サステナビリティ」に基づく開示ですね。

補充原則2-4① 上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。
補充原則3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

これって、企業の方針・戦略に関連する内容なので、CG報告書に開示するのはそうですが、有価証券報告書、中期経営計画、統合報告書などの記載事項にも影響がありそうな内容ですね。すべての開示情報への反映と各情報との整合性をとらなければならないので、特にスタンダード市場上場予定の企業は、早めに対応しないといけないですね。


ダイバーシティ

開示が拡充された「ダイバーシティ」ですが、皆さんもしょっちゅう耳にする単語なんじゃないでしょうか。

「ダイバーシティ」とは、”多様性を受け入れる”という意味なんでしょうが、なんだかわかっているような、わかっていないような言葉じゃないですか?私だけかな?

で、最近、ダイバーシティのことを考えさせられる本に出会ったので、紹介しておきます。

「ダイバーシティ」体験本‼

そうです。元アメリカ大統領バラク・オバマさんの奥様、ミッシェル・オバマさんです。

この本は、彼女の誕生から、ファーストレディーとしての8年間の活動まで、「黒人女性」という視点で書かれた自叙伝です。

彼女は、「自分の存在意義は何なのか」ということを強く意識しており、そのせいか、他の人との「差」をすごく意識しているように感じました。

この「差」を理解した上で、受け入れていくことこそが、ダイバーシティなのではないでしょうか。

じゃあ、この「差」を理解するには、どうすればいいのか。

そもそも、ダイバーシティを理解したいと思っているということは、今の現状ではその多様性を理解するには難しい環境にいるということですよね。

そうだとすれば、それはもう、どういった違いがあるのかを知る、ことに尽きるのではないでしょうか。

もちろん、全てを知ることはできないと思いますが、全く知らない中でダイバーシティを考える・感じることは、難しいと思います。

日本とは異なるアメリカの地で、「黒人女性」という立場で、そして、全世界の人達から見られるアメリカの「ファーストレディー」という立場で、どういった差を感じて、生きてきたのかをこの本では知ることができます。

また、この本には、ミッシェル・オバマさんとつながりのある、本当に多くの人が紹介されています。そして、その人達に対して彼女が感じた「差」も知ることができます。つまり、この本1冊だけで、多くの「差」を知ることができます。是非、ご覧ください。

さらに言うと、ミッシェル・オバマさんは、女性の悩みという悩み(キャリアウーマンとしてのキャリア、不妊治療、出産、ワンオペの育児、夫との関係等)を、包み隠さず書いてくれています。

悩みを抱えた時、どういう感情を抱き、そしてどうやって乗り越えてきたのか。

これは、キャリアウーマンにとってすごく参考になると思うし、私としては、女性が悩みを抱えた時に、どういう”感情”抱くのかを知ることができる、男性こそ読んどくべき本でもある気がしました。

これもまた、ダイバーシティですかねw。

長々と書きすぎましたね。是非、手に取ってみてください。では。

参考