今回のテーマ
今回のテーマは「補助簿」です。
いや、なんだよそれ?
って、なりますよね~。
取引が発生したら、「仕訳帳」と「総勘定元帳」に記入するという説明を、「簿記の流れ(仕訳帳→総勘定元帳→試算表→精算表)」でしました。
が、この「仕訳帳」や「総勘定元帳」には若干のメモはしても、詳細な情報は記載はしません。なので、あとからその仕訳だけ見ても、その取引の詳しい内容まではわからないのです。
そこで、より詳細な情報を管理するために作成する帳簿があるのです。それが、「補助簿」。
で、この「補助簿」ってのが沢山あるんです。こんな感じ↓。
主要簿 | 補助簿 | ||
(仕訳帳) | (総勘定元帳) | (補助記入帳) | (補助元帳) |
【資産】 | |||
現金 | 現金出納帳 | – | |
小口現金 | 小口現金出納帳 | – | |
当座預金 | 当座預金出納帳 | – | |
売掛金 | – | 売掛金元帳 | |
受取手形 | 受取手形記入帳 | – | |
建物・土地・車両・備品 | 固定資産台帳 | ||
【負債】 | |||
買掛金 | – | 買掛金元帳 | |
支払手形 | 支払手形記入帳 | – | |
【損益】 | |||
売上 | 売上帳 | 商品有高帳 | |
仕入 | 仕入帳 | 商品有高帳 |
いや~、多いですね~…しかも、ここに記載した「補助簿」以外にも会社は自由に作成できるのです…
が、ここに挙げた「補助簿」を抑えておけば十分なのでご安心ください。
因みに、「仕訳帳」「総勘定元帳」には、「主要簿」というグループ名があり、「補助簿」にも二つのグループがあって、「補助記入帳」と「補助元帳」というグループ名がありますが、こちらは「ふ~ん」でいいです。
では、「補助簿」の世界へ、どうぞ。
因みに、今回以外の「補助簿」を確認したい場合は、こちらを参照ください。
【簿記3級】予想問題
以下の取引が記録される補助簿の名前を答えなさい。
- A株式会社から商品500,000円を仕入れ、代金の半分は約束手形を振り出し、残りは掛けとした
※上記問題、公表されている簿記3級サンプル問題を参考にKazuが勝手に作成しています。
問題①
主要簿 | 補助簿 | ||
(仕訳帳) | (総勘定元帳) | (補助記入帳) | (補助元帳) |
【負債】 | |||
買掛金 | – | 買掛金元帳 | |
支払手形 | 支払手形記入帳 | – | |
【損益】 | |||
仕入 | 仕入帳 | 商品有高帳 |
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
支払手形 | 250,000円 |
※問題①の仕訳の考え方は「支払・回収に関する仕訳(小切手・約束手形・クレジット)」の問題④参照
1:買掛金元帳
必要な元帳を考える場合には、まず仕訳を切って、一つ一つの勘定科目毎に考えていけばOK。
まずは、貸方の「買掛金」から考えていきましょう。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
支払手形 | 250,000円 |
では、今回は、Kazuの思い出話。
スーパーを運営しているO株式会社は、農家のA株式会社から、スーパーで販売する野菜を仕入れています。そして明日は仕入代金の送金日。
Kazuは、送金前に請求書の内容を確認しなくっちゃと腕まくり。ただ、この作業をする時は、いつもほくそ笑んでしまうKazu。
実はKazuの入社当時は、仕入先毎に残高を管理していませんでした。なので、請求書の内容をチェックしようとしたら、買掛金勘定に記載されている大量の取引の中から、取引先毎にひとつずつチェックするしかなかったのです。
あれは、本当に地獄だったなぁ、金額が合わなかったときの絶望感ときたら、もうほんと、今でも泣けてくるわ。でも、今はシステムで、取引先毎に残高内容チェックできるから、楽だわ~。
さっさと、チェックしちゃお。
こんなことを想像しながら、「買掛金元帳」を見ていきましょう。
買掛金元帳って何?
結論:「買掛金元帳」ってのは、総勘定元帳の買掛金勘定を、取引先毎に分類(整理)したもの。
買掛金勘定(総勘定元帳)は、買掛金に関する全て取引が日付順に記載されているだけで、分類とかされていません。
ということは、ただ、総勘定元帳の買掛金勘定を見ても、今買掛金の残高はいくらといった総額ぐらいしか理解できないのです。そこで買掛金勘定を、取引先毎にブレイクダウンした元帳が買掛金元帳。
簡単でしょ。補助簿が理解を補助してくれているわけです。
元帳イメージはこちら。
右側の方がイメージつきやすいと思いますが、各会社ごとの買掛金の残高明細です。それだけ。簡単でしょ?
(取引先毎に管理する理由)
イメージストーリーのように、仕入先へ代金を支払う際、相手からの請求書などとチェックする時に利用したりします。
ということで、まず一つ目の答えはわかりますね。答えはこちら↓
仕訳に買掛金勘定がある場合、総勘定元帳だけでは理解しずらいので「買掛金元帳」を使用して取引毎の残高を管理する場合があります。
2:支払手形記入帳
次は、貸方の「支払手形」です。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
支払手形 | 250,000円 |
Kazuが新人の時、耳にタコができるぐらい、P社長から言われていたことが。
「不渡りは出すなよ」
いまでこそ、資金繰りに窮することはなくなったので、社内でこの言葉は死語になりつつあるが、厳しい時代もあったのだ。
当時、社長の言葉を聞くたびに、「言われなくたって出さないようにするわ」と(心の中)で言っていたKazu。ただ、P社長が口を酸っぱくして言っていたのには理由があったのです。
実はO社立ち上げ当初に、P社長の旧友がやっていた会社が不渡りを出し、事業ができなくなるのを目の当たりにしていたのです。そこからP社長は、支払手形はちゃんと管理しよう決意したのだとか…
こんなことを想像しながら、「支払手形記入帳」について見ていきましょう。
支払手形記入帳って何?
結論:「支払手形記入帳」ってのは、振り出した支払手形の詳細な情報を記載しておく帳簿です。
これは、見ちゃった方が早いので、こちらをご覧ください。
なにやら、一杯記載されていますが、難しい話はなく、最初に書いた通り、振り出した支払手形の内容を、詳細に記載しているだけです。
よく見てください、約束手形に記載されている内容が、転記されているだけですよね?あとは、最後のてん末の記載欄があるだけ。
はい、簡単でした。
(ここで、「手形のミミ」があるじゃんって思った方)
よくご存じで。その通り、約束手形の重要な内容は、「手形のミミ」にも記載します。
ちなみに「手形のミミ」ですが、手形は手形帳という手形の束からチケットのように、切り取って相手に渡していくのですが、その切り取ったあとに残る背の部分のこと。
で、これがあるのになぜ、手形帳を作成するのかというと、それは一覧表というメリットがあるから。
年に、1・2回しか手形を利用しない場合には、支払手形記入帳は不要だと思います。ただ、毎月何十枚・何百枚と手形を発行する場合には、手形のミミだけで支払いのタイミングなどを管理するのは、非常に非効率だし、漏れなどが発生しやすくなってしまいます。
想像してみてください、何十枚も確認しなきゃいけないのに、その都度、今回の手形のミミはどれかを確認する大変そうな姿を。
また、一覧表を作成しておけば、何日までに当座預金にいくらなきゃいけないのかなど、集計も可能になります。
こんな感じで支払手形記入帳は、一覧表というメリットを享受したい場合に作成するのです。
これで、もう一つの答えはわかりますね。答えはこちら↓
仕訳に支払手形勘定がある場合、支払手形の管理をより効率的にするために「支払手形記入帳」で一覧表を作成する場合があります。
3:仕入帳
次は借方の「仕入」を見ていきましょう。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
支払手形 | 250,000円 |
P社長が、「明日までに、いつもの仕入に関する資料を準備しておいてくれ。」とKazuに言ってきた。Kazuは、「承知しました、準備してお持ちします」と答える。
このやり取りは毎月恒例になっていて、メインの仕入先の仕入商品、仕入単価、仕入総額の推移などを、チェックするのだ。
実は過去に、仕入単価が高騰しているのに気づかず、いつも通り注文してしまい、かなりの痛手を被ったことからこのチェックは始まったのだとか。
そして、いつも通りの注文をしてしまったのが、新人のKazuだったのでした…
(Kazu談)
当時は人手が足りず、先輩にとにかくいつも通りでいいから注文しといてと言われて、注文してしまったのだとか。
いや~、なんでも、自分で判断しないとダメなんだと、入社してすぐに学ばせてもらいましたよ、今だから言えますけど当時は、本当にクビになるかとヒヤヒヤでしたと、苦笑いのKazuでした。
(P社長談)
あの経験はある意味良かった。メインの仕入先に関するミーティングを毎月実施し始めてから、今では、みんながどこから、どんな商品を、どんな価格帯で仕入ているのかという知識が定着し始めている。
これは、経営をする上で本当に大事だと思う。なにか変な判断をしちゃいそうな時も、誰かが気づく可能性が高くなるからね。
と、満足そうな顔で話していた。
こんなことを想像しながら、具体的な説明に入っていきましょう。
仕入帳って何?
結論:「仕入帳」ってのは、仕入の内訳情報を記載した帳簿のこと。
「仕入の内訳情報」とは、取引先、商品、各仕入数量・単価のこと。
なんだ、そんなことか、って感じでしょ。
そう、補助簿っていうのは、「仕訳帳」と「総勘定元帳」だけでは把握しきれない情報を整理・管理するものなので、「仕訳帳」と「総勘定元帳」の情報をブレイクダウンしたものというイメージを持っていればOK
で、仕入帳ってどんなものなのかは、こちら。
仕入先、商品の内訳と各仕入数量・単価が記載されているでしょ。ただ、それだけ。
(内訳を把握しておく理由)
より詳細な情報を把握・管理しておくことにつきます。
仕訳上の「仕入」は総額しかわからないし、特に多くの種類の商品を仕入れている場合には、明細を作成しておかないと記憶しておくことはほぼ不可能。
あれ?この時の仕入が高いけど何買ったんだっけ?と思った時に、機能を発揮する帳簿。
これだけで、問題の答えはわかりますね。答えはこちら↓
仕訳に仕入勘定がある場合、仕入高の内訳情報を把握するために「仕入帳」を作成する場合があります。
4:商品有高帳
次は借方の「仕入」を見ていきましょう。
あれ?さっき、「仕入」については見たよね?
その通りです。が、残念ながら「仕入」についてはもう一つ関連する元帳があるのです。今回はこれが最後なので、もう少しお付き合いください。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 250,000円 |
支払手形 | 250,000円 |
Kazuと同期のFuji。彼が日本に戻って来ているというので、久しぶりに会うことになった。彼は、留学に行くと言って、突然O社を辞めてしまったのだが、時々近況を報告してくれていた。
といっても、ほとんどキャンパスライフを楽しんでいる写真ばかりで、お前はスーパーで何しているんだと言わんばかりの写真しか送ってこなかったが、Kazuは自由に生きている彼を尊敬していた。
そんな彼には、社内であだ名があった。彼は倉庫担当だったのだが、倉庫のありとあらゆる商品や単価が頭に入っていて「歩く倉庫」と言われていた。
彼は全然うれしくなさそうだったが(というか誰もがそういわれてもうれしくないだろうが)、本当にすごいのだ。毎日商品は入れ替わり、時々新商品も追加されて、さらに数量・単価は変わっていくのに、その大半をなぜか覚えているのだ。
彼曰く、新人の時、自分が担当していた商品の在庫を切らしそうになって、上司に猛烈に怒られたんだそうだ。そこから在庫数量は確認するだけじゃなくて、インプットする癖をつけたのだとか。
どうやって覚えたの?って聞くと、いや「商品有高帳」に書いてあるじゃんと言うだけ。
・・・
「いや、だからあんな大量のものをどうやって覚えていたんだ?」と聞きたかったが、こう回答するということは、俺のような凡人が真似できるものではないと悟り、でかかった質問は飲み込んだ。
が、唯一、「商品有高帳」というのは、商品在庫を管理する上で大事なものが詰まっているんだなということだけはわかったので、よかったことにしようと思うKazuだった。
こんなことを想像しながら、「商品有高帳」をご覧ください。
商品有高帳って何?
結論:「商品有高帳」ってのは、今商品はいくつあり、それはいつ・いくらで取得したのかを把握するための帳簿。
突然ですが、皆さんが、スーパーの倉庫担当者になったところを想像してみてください。どんなことに注意しますか?
そうです、在庫を切らさないことですよね。
では、その在庫をきらさないようにするために意識することは、何か?
そうです、各在庫毎の最低保有数量です。常にどれくらいの数量がないとダメかというラインですね。
で、その上で、じゃあ今いくつあるの?ということになるわけです。そこで作成されるのが、「商品有高帳」。
じゃあ、「商品有高帳」がどんなものなのか見てみましょう。
これも、見ればわかりますね。入ってきた商品、出ていった商品、そして、今ある商品が記載されているだけ。
これで、在庫数量を把握することが可能になるわけです。
問題の答えはわかりますね。答えはこちら↓
仕訳に仕入勘定がある場合、入ってきた商品を把握して在庫管理をするため「商品有高帳」を作成する場合があります。
最後の一言
今回は「補助簿」、その中でも、「買掛金元帳」「支払手形記入帳」「仕入帳」「商品有高帳」について見てきました。
なんだか、色々あってよくわからないなぁと思った方は、まず抑えるポイントは、「補助簿」は、「仕入帳」「総勘定元帳」には載っていない詳細な情報が載っていることをおさえてください。
その上で、各補助簿がどんな時に作られるのかをイメージしてください。
それができたら、もう補助簿は大丈夫です。
あとその他の「補助簿」について確認したい時は、こちらを参照ください。
勉強に飽きた時にでも
記憶力関連で1つ、余談。
皆さん、トランプ1山(52枚)をランダムで見せられて、見せられたトランプの順番、覚えてられますか?
そんなとんでもないことを競っている競技があります。「世界記憶力選手権」です。
しかも、その競技で8回も優勝した方がいます。ドミニク・オブライアンさん。この方の記憶方法を知りたい方、こちらをどうぞ↓↓。ポイントは、「場所」と「モノ」のイメージ(関連付け)力なのだとか。
勉強に飽きた時にでも、どうぞ。