今回は、会社を運営をしていく上で発生する「経費」を中心に見ていきます。
ということで、新規店舗の検討を任されたKazuのお話。
スーパーを運営しているO株式会社のP社長は、事業を拡大させるために新規出店する場所について議論するようKazuに指示を出しました。言われたKazuは、様々な地域をリサーチし、他の検討メンバーと毎日喧々諤々と議論しβ地区を候補にしようと意見がまとまってきたところに、突然、「新規出店場所はα地区に決めたぞ‼」とP社長が満面の笑みで言ってきた。
・・・
一瞬言っている意味が分からなかったKazuだったが、瞬間的に社長が独断で決めてきたんだと状況を理解。そして理解した瞬間、「今までの議論はなんだったんだよ(怒り)‼」と心の声が口から出そうになったが、なんとか踏みとどまり、「決まったんですね、それは良かった」と、大人の対応で切り抜けた。
(社長の後日談)
駅前のビルに、スーパーにピッタリのスペースが空いたとα地区に詳しい不動産業者からP社長に連絡があり、ナイスすぎる場所だったので、P社長は即決で不動産屋と契約を結んできたんだとのことです。
案の定、新店担当になったKazuは、なんだかなぁと思いながらも、さっそく開店に向け準備を開始。水道局・ガス・電気会社にも連絡し、さらに電話も開通させて準備万端と思っていたら…
午後に振り出す予定の支払手形に貼る収入印紙が無いことに気づき、急いでコンビニに買いに行きました。
「危なかったぁ、でも失敗しませんから、わたし」と、コンビニで買った缶コーヒーを飲みながら思うKazuでした。
こんな状況を想定しながら、【簿記3級】予想問題を解いてみてください。
【簿記3級】予想問題
以下の取引を仕訳しなさい。
- O株式会社は、新規出店するためにビルの2Fを1ヶ月あたり300,000円の賃貸借契約を締結し、今月分の家賃を普通預金から振り込んだ。
- 賃貸借契約を締結したことに伴い、敷金(家賃2ヶ月分)と不動産業者に対する仲介手数料(家賃の1ヶ月分)を小切手を振り出して支払った。
- 新店舗にかかる電話料金7,500円、水道光熱費10,000円が、普通預金口座から引き落とされた。
- 収入印紙を1,000円を現金で購入し、すぐに使用した。
※問題文は公表されている簿記3級サンプル問題をベースに作っています。なお、O株式会社は架空の会社です。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 支払家賃 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
② | 差入保証金 | 600,000円 | 当座預金 | 900,000円 |
支払手数料 | 300,000円 | |||
③ | 通信費 | 7,500円 | 普通預金 | 17,500円 |
水道光熱費 | 10,000円 | |||
④ | 租税公課 | 1,000円 | 現金 | 10,000円 |
問題①&②:賃貸に関する問題
問題①:O株式会社は、新規出店するためにビルの2Fを1ヶ月あたり300,000円の賃貸借契約を締結し、今月分の家賃を普通預金から振り込んだ。
問題②:賃貸借契約を締結したことに伴い、敷金(家賃2ヶ月分)と不動産業者に対する仲介手数料(家賃の1ヶ月分)を小切手を振り出して支払った。
問題文を見て考えなけれならないポイントは3つ。
- どんな取引?
- 仕訳は?
- BSとPLはどうなるの?
1:どんな取引?
今回は、事務所の「賃料」です。
これはイメージできますかね。一人暮らしをしようと思って、マンションやアパートの部屋を借りるのと同じで、多くの会社は自分のビルなど持っていません。なので、この地域に進出したいなと思ったら、その地域のビルやら施設を保有している人(オーナー)にお金を払ってお店の場所を借りてるんです。
その支払っている額を「賃料」といいます。
敷金
あと、不動産を借りる際には、不動産屋(オーナー)に「敷金」というものを払うのが一般的です。
この「敷金」というのは、不動産屋(オーナー)に預けるお金で、その場所を出ていくときに返ってくるお金です。
えっ、なんで預けなきゃいけないの?と思いますよね。借りる側からすると。
ただ貸す側からすると、ちゃんと賃料を払ってくれるのか不安なのです。そこで、何かあった時のために、預かっておくのです。
例えば、会社が経営不振となり賃料が支払えなくなったと言われたら、預かっていた敷金で賃料に充当するということです。
なので、その分の資金を準備しなければならないのです。やむなし。
不動産の仲介業者
この問題では、いきなり不動産屋さんと契約できてますが、実際は出店する場所を探す必要がありますよね。
(想像してみてください) 皆さんの近所で、スーパーの店舗が入れそうな広い部屋が空いているビルを知っていますか? |
パッと浮かびます?定期的に(又は趣味で)チェックしている人じゃないとなかなか難しいですよね。しかも、新しい地域に進出するとなったら、その地域の不動産をゼロから調べるのは大変です。そんな時は空き部屋情報を持っている、不動産の仲介業者を利用したりします。
賃貸マンション・アパートを探す時に使う「SUUMO」とかと同じです。
ここまでわかれば、イメージできますね。
スーパーを出店できる場所を不動産の仲介業者に相談したら、駅前のビルの2Fを借りることができたので、不動産のオーナーに敷金と、仲介業者に仲介料を支払っているイメージができればOK‼
2:仕訳は?
仕訳を切るときは、仕訳で何を現わしたいかを考えるんでしたね。
O株式会社は、新規出店するためにビルの2Fを1ヶ月あたり300,000円の賃貸借契約を締結し、今月分の家賃を普通預金から振り込んだ。
まず、問題①。今回の取引で何を現わしたいのか。
- 普通預金の残高が減ったこと
- 店舗運営に賃料がかかっていること
そしてこれを仕訳で表現すると、こうなります。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 支払家賃 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
賃料を普通預金から振り込んだことで、普通預金の残高が減ったことを仕訳で現したいんです。
こちらは普通預金に入金があったことの逆なので、わかりますね。
答えはこちら↓
賃料を普通預金から振り込んだことを仕訳にすると、貸方「普通預金」300,000円になります。
スーパーの店舗を運営をするために賃料がかかっていることを仕訳で現したいんです。
では、以下のプロセスで考えていきましょう。
- BS・PLのどっち?
- 借方・貸方どっち?
- 「勘定科目」は何を使う?
BS・PLのどっち?
BS・PLってなんのために作っているのか思い出せばいいんでしたね。
- 今いくらありますか? ⇒BS
- 今年はいくら稼ぎましたか? ⇒PL
店舗運営のために支払った賃料は、野菜を販売するための場所を確保するのにかかっているので、野菜を販売して最終的にいくらもうけたのかを知るために必要な支出ですね。なので「いくら稼ぎましたか」のPLです。
借方・貸方どっち?
PLの「貸方」と「借方」がどんなものだったか、思い出してもらえればわかります。
貸方は「稼いだお金」、借方は「稼ぐために支払ったお金」、そして差額が「もうけ」です。
そして、そもそも「稼ぐために支払ったお金」のことを「費用」というんでしたね。なので、店舗運営のために支払った賃料は、借方の「費用」になります。
「勘定科目」は何を使う?
不動産屋に支払う手数料は「支払家賃」または「賃借料」という科目を使います。
この3つがわかれば仕訳が切れますね。
スーパーの店舗を運営をするために賃料がかかっていることを仕訳すると、借方「支払家賃」300,000円になります。
では次に問題②を見ていきましょう。
賃貸借契約を締結したことに伴い、敷金(家賃2ヶ月分)と不動産業者に対する仲介手数料(家賃の1ヶ月分)を小切手を振り出して支払った。
今回の取引で何を現わしたいのか。
- 小切手を振り出したこと
- 敷金を支払ったこと
- 仲介料を支払ったこと
そしてこれを仕訳で表現すると、こうなります。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
② | 差入保証金 | 600,000円 | 当座預金 | 900,000円 |
支払手数料 | 300,000円 |
敷金と仲介料を支払うために、小切手を振り出したことを仕訳で現したいんです。
「小切手」については、勉強済みですね。
答えはこちら↓ 小切手の考え方がわからなかったら、「支払・回収に関する仕訳(小切手・約束手形・クレジット)」の問題①の仕訳を再度チェック。
敷金と仲介料を支払うために小切手を振り出したことを仕訳にすると、貸方「当座預金」900,000円になります。
賃貸借契約を結んだことで、敷金を支払ったことを仕訳で現したいんです。
では、以下のプロセスで見ていきましょう。
- BS・PLのどっち?
- 借方・貸方どっち?
- 「勘定科目」は何を使う?
BS・PLのどっち?
BS・PLってなんのために作っているのか思い出せばいいんでしたね。
- 今いくらありますか? ⇒BS
- 今年はいくら稼ぎましたか? ⇒PL
「敷金」というのは、不動産屋(オーナー)に預けるお金で、その場所を出ていくときに返ってくるお金と説明しました。
つまり、ただ不動産屋に預けているだけのお金なので、不動産屋に預けている額はいくらですか?となり、「今いくらありますか」のBSです。
(事業を運営するために支出したんだから、いくらもうけたかのPLじゃないの?と思った方) そう思いますよね。でも、そのお金は本当に使った(消費した)のか?と考えてみてください。確かに、支出はしました。でもそのお金は一時的に不動産屋が預かっているだけで、何もなければ将来戻ってきますよね。つまり、戻ってこないことが確定しないかぎり使った(消費した)と言えず、お金のある場所が変わっただけで、まだ自分の財産だと考えるのです。 |
借方・貸方どっち?
ではBSの内、貸方と借方のどっちになるのか。
BSの借方と貸方には大きな意味がありました。借方は「運用」、貸方は「調達」を意味しているんでしたね。
今回は自分のお金を預けた(運用した)と考えることができます。なので、「運用」の借方になります。
「勘定科目」は何を使う?
敷金については、「差入保証金(さしいれほしょうきん)」という科目を使います。
この3つがわかれば仕訳が切れますね。
賃貸借契約を結んだことで、敷金を支払ったことを仕訳すると、借方「差入保証金」600,000円になります。
賃貸借契約を結んだことで、仲介料を支払ったことを仕訳で現したいんです。
店舗の運営のために仲介料を支払ったということは、野菜を販売するための場所を確保するのにかかっているので、野菜を販売して最終的にいくらもうけたのかを知るために必要な支出ですね。なので「いくら稼ぎましたか」のPLです。
これ、「支払賃料」の説明と同じですね。つまり、費用の「借方」です。
ただし、科目は「支払手数料」を使います。
賃貸借契約を締結できたので、その報酬として不動産の仲介業者に仲介料を支払ったことを仕訳すると、借方「支払手数料」300,000円になります。
3:BS・PLはどうなるの?
問題①と②の仕訳になります。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
① | 支払家賃 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
② | 差入保証金 | 600,000円 | 当座預金 | 900,000円 |
支払手数料 | 300,000円 |
この仕訳をBS・PLに記載するとこうなります。
まず、問題①は、スーパーの店舗運営の場所代として支払賃料300,000円がかかっていて、それを支払ったことで普通預金が減少していることがイメージできればOK‼
問題②は、スーパーの店舗運営の場所を確保するために仲介業者への報酬が300,000円がかかっていて、また店舗の場所確保のために敷金を不動産屋に差し入れたことで、当座預金が減少していることがイメージできれば、こちらもOK‼
問題③:通信費・水道光熱費に関する問題
新店舗にかかる電話料金7,500円、水道光熱費10,000円が、普通預金口座から引き落とされた。
問題文を見て考えなけれならないポイントは3つ。
- どんな取引?
- 仕訳は?
- BSとPLはどうなるの?
1:どんな取引?
一人暮らししたことがある人はわかりますね、電気・ガス・水道の契約って面倒くさいですよね。でも、生きていくためには必須なので最初にやらないといけないヤツです。プラス、今の時代は携帯も必須ですね。
これは、会社でも同じ。
会社もお客様や従業員との連絡手段として電話(携帯)は必要だし、人が働いている事務所や、お客様が来る店舗には、電気、ガス、水道が必要になります。
これは、イメージしやすいですよね。
2:仕訳は?
仕訳を切るときは、仕訳で何を現わしたいかを考えるんでしたね。
新店舗にかかる電話料金7,500円、水道光熱費10,000円が、普通預金口座から引き落とされた。
まず、問題①。今回の取引で何を現わしたいのか。
- 普通預金の残高が減ったこと
- 電話料金・水道光熱費ががかかっていること
そしてこれを仕訳で表現すると、こうなります。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
③ | 通信費 | 7,500円 | 普通預金 | 17,500円 |
水道光熱費 | 10,000円 |
電話料金と水道光熱費を普通預金から振り込んだことで、普通預金の残高が減ったことを仕訳で現したいんです。
問題②の「賃料」と全く同じなので、わかりますね。
答えはこちら↓
電話料金と水道光熱費を普通預金から振り込んだことを仕訳にすると、貸方「普通預金」17,500円になります。
スーパーの店舗を運営をするために電話料金と水道光熱費がかかっていることを仕訳で現したいんです。
こちらも会社を運営していく上で必要というのは問題①の「賃料」と同じです。違うのは「勘定科目」だけ。
でも、簡単。
電話代やインターネット代は、「通信費」、水道・電気・ガスは、「水道光熱費」を使うだけ。わかりやすいですよね。
これがわかれば仕訳が切れますね。
スーパーの店舗を運営をするために賃料がかかっていることを仕訳すると、借方「通信費」7,500円、借方「水道光熱費」10,000円になります。
(今回の解説は、問題①と同じという説明しかしてないので、手を抜いているように感じた方) 決して手を抜いているわけではありません(もちろん楽ではありますが笑)。この「同じです」と言っているのには一応意味があります。色々な問題を解いていくと、似ている取引があることに気づいてほしいのです。考え方が同じなら、勘定科目だけ学べばいいだけになります。むしろ考え方を使いまわす勉強をした方が効率的です。なので学ぶべき問題数を可能な限り少なくして合格するには、すでに勉強済みの論点はできるだけ思い出して解いてみてください。と、ちょっと言い訳をさせていただきました… |
3:BS・PLはどうなるの?
問題③の仕訳はこうでしたね。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
③ | 通信費 | 7,500円 | 当座預金 | 17,500円 |
水道光熱費 | 10,000円 |
この仕訳をBS・PLに記載するとこうなります。
これはもうイメージできますね。
まず、スーパーの店舗を運営する費用として通信費と水道光熱費がかかっていて、それを支払ったことで普通預金が減少していることがイメージできればOK‼
問題④:収入印紙に関する問題
収入印紙を1,000円を現金で購入し、すぐに使用した。
問題文を見て考えなけれならないポイントは3つ。
- どんな取引?
- 仕訳は?
- BSとPLはどうなるの?
1:どんな取引?
みなさん、収入印紙って買ったことありますか?普段買わないですねよ。でも、ものすごく身近に収入印紙はあります。
実は、紙の通帳には収入印紙が貼ってあります。正確には「印紙税申告納付につき●●税務署承認済み」と書いてあるだけですが、収入印紙を貼ることで1通に付き200円の印紙税を銀行が払ってます。
で、この「印紙税」ってなんなのかというと、国が指定した文書を作成したら徴収される税金です。
この指定した文書というのが、領収書、約束手形や不動産の契約書など色々あるので、該当文書を作成した会社(ほとんどの会社は該当しちゃいます)はこの印紙税を払うために、収入印紙を購入します。
ちなみに、この収入印紙は郵便局やコンビニなどで売ってます。
購入した収入印紙を、切手をはがきに貼るのと同じように、文書に貼るのです。今回は、商品の仕入れ代金を支払手形で支払う際に、収入印紙を約束手形に貼って支払ったことをイメージできればOK。
(余談ですが・・・) 銀行がWeb通帳の利用を促進している理由の一つがこれです。上述の通り、紙の通帳には印紙税がかかっちゃうので、銀行はできるだけ発行したくなかったわけです。そしてついに、みずほ銀行や三井住友銀行は紙の通帳の有料化に踏み切ったわけです。 |
2:仕訳は?
仕訳を切るときは、仕訳で何を現わしたいかを考えるんでしたね。
収入印紙を1,000円を現金で購入し、すぐに使用した。
まず、問題①。今回の取引で何を現わしたいのか。
- 現金残高が減ったこと
- 収入印紙を使ったこと
そしてこれを仕訳で表現すると、こうなります。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
④ | 租税公課 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
収入印紙を購入したことで、現金残高が減ったことを仕訳で現したいんです。
問題②の「賃料」と考え方は同じなので、わかりますね。
答えはこちら↓
収入印紙を現金で購入したことを仕訳にすると、貸方「現金」1,000円になります。
購入した収入印紙を使ったことをことを仕訳で現したいんです。
こちらも約束手形を支払うのに必要な収入印紙は、稼ぐための商品を購入するのにかかった支出なので、今回も問題①の「賃料」と同じ考え方でOK。違うのは「勘定科目」だけ。
今回使う勘定科目は、「租税公課」です。
これは、あまり聞きなれないですかね。「租税」というのは、国などに払う税金のこと、「公課」というのは、公共団体に払う会費などのこと、つまり公的に負担しなければならないお金というイメージを持てればOK‼。
これがわかれば仕訳が切れますね。
収入印紙を使ったことを仕訳すると、借方「租税公課」1,000円になります。
3:BS・PLはどうなるの?
問題④の仕訳はこうでしたね。
問題 | 借方 | 貸方 | ||
④ | 租税公課 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
これもイメージできますね。
収入印紙を現金で買って、すぐに支払手形に貼って使ったことがイメージできればOK‼
最後に一言
事務所を賃貸する際に発生する「費用」を中心に見てきましたが、個人でも支払っているものが多いので、イメージしやすかったんじゃないかなと思います。
ただ1つだけ、「費用」にならないものがありましたね。
そうです。「差入保証金」です。
その違いさえ理解できたら、今回はOK‼
ではまた。