中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き【前編】

「中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コードの実践の手引き」に掲載されている中小企業が、どんなDXを推進しているのか紹介してます。

こんな方におすすめ

・中小企業のDXって、どんなことしているのか知りたい方
・最近DXで活躍している企業を知りたい方
・「中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コードの実践の手引き」の内容をざっと知りたい方

 

注意

本記事には、Kazuの解釈が含まれている点ご承知おきください。

「中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き」って何?

中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き(以下、手引き)は、一言で言うと、

中堅・中小企業が実践しているDXの事例集

です。

もともと、DXの事例集としては、DX銘柄に選定された企業について開示がされています。

「DX銘柄2022」企業選定レポート

ただ、DX銘柄企業は、大企業ばかり

多くの企業は、非上場の中小企業であり、大企業の事例では、DXが身近に感じられにくい可能性がある

そこで、中小企業の好事例を紹介することで、中小企業社にもDXを身近に感じてもらい、DXに取組んでもらいやすくするもの

本記事で紹介する事例一覧

手引きには、13社掲載されていて、本記事では、6社紹介してます。

気になる企業だけ、確認するのも一つ。

(出典:中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き(一部加筆))

注意

手引き自体は、ストーリー的な記載ぶりになっているので、そっちの方が良い方は、本文を直接読んでもらった方が、いいかもしれないです

No1:北海道ワイン(酒類製造業)

会社概要

社名北海道ワイン株式会社
本店所在地北海道小樽市
業種酒類製造業
設立年1974年
従業員数82名

DX対応

課題・目的取組
・ワインの原材料であるブドウを、収穫期に合わせて、短時間で大量に、かつリアルタイムで産地情報の把握が困難
理由は、ブドウの品種や生産農家、重量などの情報を、目視や口頭、手書きなどで伝達していたから
・ブドウの重量データを計測器と専用PCを連携しデータを連動させる
・生産農家や品種をコード管理して、生産地とリンクできるようにする「ブドウ受入演算システム」を構築

この取り組みにより、ブドウの情報が、リアルタイムで集約管理でき、特定産地のブドウを、特定のタンクに貯蔵可能となり、「産地細分化ワイン(プレミアムワイン)」の製造が可能に

プラスα

産地細分化ができている証拠が。

北海道ワインの契約農家さんである、余市の北島農園で作られたブドウのワイン、「北島ヴィンヤード No.7 ケルナー 2019」がインターナショナル ワイン&スピリッツ コンペティション(2022)にて、金賞を受賞してます。

こちらから購入可能です。

あと、北海道ワイン株式会社のブランド、鶴沼シリーズ、「おたるシリーズを知っている人の方が多いのかな。

【インターナショナルワイン&スピリッツ コンペティション2021 銅賞】を受賞した「鶴沼ゲヴュルツトラミネール 2019」(白/やや辛口)

【サクラアワード2021 ゴールド賞】を受賞した、「おたる 特撰キャンベルアーリ」(ロゼ/甘口)

 

No2:マツモトプレシジョン(精密機器機械加工業)

会社概要

社名マツモトプレシジョン株式会社
本店所在地福島県喜多方市
業種精密機器機械加工業
設立年1948年
従業員数157名

DX対応

課題・目的取組
・創業70年以上の老舗として、変化を受け入れていくこと・社長自身が、「会津産業ネットワークフォーラム」で、大学、地域企業、Sler等と地域の生産性向上に向けた議論を通じて、経営者としてシステム刷新の必要性について勉強
・役員やIT担当の社員に、社長自らビジョンとDX推進の必要性を説く
・老舗企業内に、「変わっていいのだ」という雰囲気を醸成
・生産性の向上・ERPではなく、中小企業向け共通業務システムプラットフォーム「CMEs(Connected Manufacturing Enterprises)」の導入 

このCMEs導入過程で、いままでの無駄な業務や無理な計画が明らかに。そして、なによりデータにより各部門がつながったことで、他部門に正しい情報を流さなければという企業文化に変化が生じているという。

プラスα

CMEsについては、関係者であるaccentureとSAPからも記事が掲載されていて、そこにもちろん、マツモトプレシジョンさんが登場いたします。気になる方は、こちらも併せてどうぞ。

【accenture】中小製造業のデジタル変革により日本全体の生産性向上実現へ

【SAP】会津発 ANF構築の「CMEs」が目指す地域全体の生産性向上

No3:ヒバラコーポレーション(工業塗装業)

会社概要

社名株式会社ヒバラコーポレーション
本店所在地茨城県東海村
業種工業塗装業
設立年1967年
従業員数43名

DX対応

課題・目的取組
・塗料は個人の力量で、工程にかける時間に差がある(それを縮めることはできないか?)・熟練工の暗黙知を形式知化。
・作業プロセス毎に、どの程度時間をかけるのか基準を設定
・各工程の作業開始と終了をバーコード入力し、1品毎に進捗管理を可能に
・輸送コストの観点から、受注可能な距離に制約が(遠方から受注ができないか?)・膨大なデータとAIを用いて最適な塗料の配合量を算出する「配合条件アドバイザー」という仕組みを構築
・アラート機能を設定し、遠隔でも状況把握を可能に

この取り組みの結果、

・全作業を見える化し、コストダウン、誤発注・誤入力の防止、管理に関わる時間の削減の達成
・塗装業事業者への、DXコンサルティング事業の創造

を達成、更なる高みを目指している。

プラスα

デジタルの導入、そして新たな価値創造への道のりに関するヒバラコーポレーションの記事があったので貼っておきます。手引きよりも、より具体的にかかれているので、こちらもどうぞ。

ヒバラコーポレーション、職人技依存の金属塗装業界にデジタルで新風を【効率化編】

ヒバラコーポレーション、職人技依存の金属塗装業界にデジタルで新風を【高付加価値化編】

No4:竹屋旅館(宿泊業・飲食サービス業)

会社概要

社名株式会社竹屋旅館
本店所在地静岡県静岡市
業種宿泊業・飲食サービス業
設立年1949年
従業員数50名

DX対応

課題・目的取組
・ホテルの清掃業務の委託費が高騰しているため、清掃業務を内製化しコスト削減したい・各人の労働時間や能力を見える化
・清掃作業が上手な人の手順の可視化・マニュアル化
・チャットにより、清掃状況の共有
・検討しているDXを現場に入れても、反発に合い結局破綻するのでは?・経営者が、スタッフに向けて、DXにより生産性を上げて、みんなで豊かになろうと発信
・何度も直接対話を繰り返し、現場との意識統一を図る

この取り組みの結果、DXの導入は成功し、いまでは、清掃業務に特化したノウハウのコンサル業の提供を提供するに至っている。

プラスα

突然ですが、質問です。

「メディシェフ」って知ってます?

恥ずかしながら私は知りませんでした…

医療・栄養・調理に関する知識を一気通貫で学び、健康・予防・疾患に適した食を提供する人材のこと

一般社団法人 日本医食促進協会HP

そう、竹屋旅館のごはんは、メディシェフが作ってくれているのです。

また、2022年3月に「AWA NISHI-IZU」をオープンしていて、こちらも当然メディシェフがごはんを作ってくれてます。

健康志向の方、是非どうぞ。

No5:北國銀行(銀行業)

会社概要

社名株式会社北國銀行
本店所在地石川県金沢市
業種銀行業
設立年1943年
従業員数2,147名

DX対応

課題・目的取組
・いきなりIT投資しても、財務的な制約があるので、すぐにはできない・段階的を踏んで、DXを推進
→最初の10年:エリア営業体制の導入や店舗統廃合によるコスト削減
→次の10年:営業部門のデジタル化への投資、会社の体質改善
・ベンダーのシステムに相乗りする形だと、顧客に付加価値をスピーディーに提供しにくいので、システムを内製化したいシステム開発の内製化のため、IT人材の育成・確保
・ベンダーへの出向
・シリコンバレーに行員を派遣し、最先端のFin Tech事情の収集やベンダーとのコネクションづくり
・人材育成の仕組みづくり
・データサイエンティストやセキュリティ担当者の中途採用
・首都圏にデジタル人材は集まりやすいので、東京に子会社を設立し、高度なIT人材の確保

この取り組みの結果、銀行という堅いイメージの会社でも、経営陣が迅速な意思決定を行い、失敗を恐れずに変革にチャレンジすることが可能になったというのです。

プラスα

失敗を恐れずに変革にチャレンジする内容が掲載されていました。

記事の題名からわかるように、5年の歳月をかけて、とうとう社内の人事制度を大幅に変更するです。

「全員に銀行を1回辞めてもらう」地銀の異端児・北國銀行頭取の5年がかりの大改革

変革が止まらない会社ですね。

No6:ゑびや(飲食業)

会社概要

社名有限会社ゑびや
本店所在地三重県伊勢市
業種飲食業
設立年1912年
従業員数50名

DX対応

課題・目的取組
・自社の状況を正確に把握する、客観的なデータが全くない・社長自ら、天気・気温・各メニューの売上、グルメサイトのアクセス数、近隣の宿泊者予約数等のデータを収集
・そのデータをもとに、AIを自社開発し、来客予測や画像解析によるデータ収集、必要な情報が可視化できるBIツールに変革
・経営者としてやるべきことに注力できていない・経理・労務管理など、バックオフィス業務を外注やクラウドサービスの活用に変更
・デジタル人材がいない・社長自身がDXに取り組む中でできたコミュニティを通じて人材を確保
・コロナ禍で客数が減っている間に、立候補者には、現場から離れて勉強に専念させ、リスキルさせた

この取り組みの結果、「世界一IT化された食堂」に。

経験と勘に頼るやり方から、データに基づくビジネスモデルに変革。

地道なデータ収集という努力の上に成り立っていることもわかる事例。

プラスα

ゑびや食堂のメニュー一覧を見てもらえればわかるけど、無茶苦茶うまそう。

ゑびやのメニュー一覧リンク

料金は高めだけど、まーせっかく来たんだからって、払ってしまうねこれ。

だし茶漬けとかもう、たまんないですわ。なにこの湯気の感じ。写真完璧。
だし茶漬けは時期限定メニューらしいので、気を付けて‼来店日前日までに電話で確認した方がいいらしい。

ちなみに、ここ「おだし」も販売しているので、是非どうぞ。伊勢海老・和風・野菜の3種類。

 

最後に

今回は6社見てきましたが、どの企業も、社長自らが、先頭に立って、行動していましたね。

手引きに、今回紹介したヒバラコーポレーション社長の言葉が掲載されています。

経営者は学び続けることが大切であり、もし学ぶことをやめてしまえば、そこで、企業としての成長は止まる

これは、個人でも同じですよね。

学ばなきゃ。

関連リンク