【人材版伊藤レポート2.0】これからの人材戦略への「取組」「悩み」「工夫」【5つの共通要素編】

みなトン
みなトン
「「人材版伊藤レポート2.0」の概要は知ってるけど、実際どんなことが書かれてるの?」


そんなちょっと詳しく知りたい方向けに、まとめてみました。今回は【5つの共通要素編】です。

 

注意

本記事には、Kazuの解釈が含まれている点ご承知おきください。
また、Q1とQ2は、【3つの視点編】と同じなので、すでにお読みの方はQ3からどうぞ。

Q1:「人材版伊藤レポート2.0」に何が書かれているの?

20/9月に「人材版伊藤レポート」、そして22/5月に「人材版伊藤レポート2.0」が公表されました。

簡単にいうと、

「人材版伊藤レポート」:これからの「人材戦略の在り方」について提唱

「人材版藤レポート2.0」:「人材版伊藤レポート」で提唱した「3P・5Fモデル」の実現をガイドするようなアイディアや施策・視点を提示

が書かれています。

「3P・5Fモデル」とは

2020年9月に公表された「人材版伊藤レポート」で提唱された、これからの「人材戦略」モデルのこと。

これからの「人材戦略」の、主な5つの構成要素(Common Factor)と、その実効性を確保する3つの視点(Perspective)を略して「3P・5Fモデル」と呼んでいます。

【3P・5Fモデル】

(出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」)

「人材版伊藤レポート」公表後、この「3P・5Fモデル」の進捗具合を調査した結果、

「3P・5Fモデル」の重要性は理解したが、実際に取り組もうとして足踏みしている企業が多い

という結果に。

そこで、日本企業を「人材戦略」で足踏みさせないために、「人材版伊藤レポート2.0」で、さまざまな「取組」とそれに対する「工夫」を公表。

なお、「人材版伊藤レポート」「人材版伊藤レポート2.0」の概要について知りたい方はこちらをどうぞ。

Q2:「人材版伊藤レポート2.0」のレポート構成は?

本レポートでは、3つの視点と5つの共通要素ごとに、取組がたくさん書かれています。

なにが言いたいかというと、

項目数が多いので、最初に全体像を把握してから中身に入っていった方がいい

ということで、全体像はこちら。

【3つの視点】

【5つの共通要素】


で、実はこれが本当の全体像ではないのです。。。

「人材版伊藤レポート2.0」には、上図の「取組」毎に、「工夫」を提示してくれているのです。

つまり、項目がまだまだあるということ。

で、「工夫」がたくさん記載されているわけですが、大前提として、

そもそも「工夫」が必要ということは、そこに何か問題や悩みがある

ってことですよね?

そこで、本記事では、「悩み」とそれに対する「工夫」という流れで、「人材版伊藤レポート2.0」の「工夫」をまとめてみました。

今回は【5つの共通要素】についてです。

【3つの視点】について知りたい方はこちら。

 

Q3:【共通要素1】動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用

取組一覧

(1)将来の事業構想を踏まえた中期的な人材ポートフォリオギャップ分析
(2)ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得
(3)学生の採用・選考戦略の開示
(4)博士人材等の専門人材の積極的な採用

(1)将来の事業構想を踏まえた中期的な人材ポートフォリオギャップ分析

取組理由
中期的な経営戦略実現に向け、各事業が中長期的に必要とする人材の質と量を把握し、現状とのギャップを明確にする各事業の足元の組織体制を制約とせず、将来の事業構想を踏まえることで、将来の企業価値向上につなげるため
悩みと工夫
人材ポートフォリオって、どうやって考えるの?
【工夫1】各事業の環境の変化に応じて整理していくのが一案。
例えば、自社の立ち位置が比較的見通しやすい事業であれば、できるだけ具体的に人材の質と量を定義したり、将来が見通しずらい場合には、その時点でニーズが明確な部分に焦点をあててギャップ分析したりする
必要な人材って、人事部で検討するの?
【工夫2】各事業に必要となる人材を、現場から離れた本社の人事部門が判断するのは現実的ではないので、事業部門が人材ポートフォリオの策定や人材の確保を主導する
じゃあ、人事部は何をするの?
【工夫3】全社的な経営戦略の実現やグループ経営において重要な役割を果たす人材ポートフォリオの策定に注力する
経営戦略を変更するたびに、人材ポートフォリオも見直さなきゃいけないの?
人材ポートフォリオの見直しは現実的ではないので、将来の経営戦略の選択肢にも耐えうる人材ポートフォリオを目指す。

(2)ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得

取組理由
ギャップに基づき、迅速に、社員の再配置や外部人材の獲得を検討経営戦略を実現するための基盤を早期に形成するため
悩みと工夫
社内の再配置と、外部人材の獲得は、どう使い分けるの?
【工夫1】既存の事業の高度化に必要な人材は、企業内の計画的な配置により確保を検討して、
現時点で十分な知見を持ちえない新規事業の立ち上げや新製品の開発、DXの推進等に必要な人材については、外部獲得する方法もある。
必要な人材を、獲得し、定着してもらうにはどうすればいいのか?
【工夫2】魅力的な職務を提供するだけじゃなく、市場に対して競争力のある処遇水準を設定して、成果とそれにつながる行動を適切に評価する評価制度の見直しを行ってみる
優秀な人材を確保するほど、高い報酬は払えないよ・・・
【工夫3】「週5フルタイム」は難しくとも、プロジェクトベースで週2日副業人材を受け入れるなど、多様な雇用形態で対応してみる
必要な人材なんて、すぐにはみつけられないよ。
【工夫4】必要な人材を1人でも多く確保するために、自社を退職した人材(アルムナイ)とも中長期に優良な関係を気づいておくなど、ネットワークを構築していく

(3)学生の採用・選考戦略の開示

取組理由
新卒一括採用に対するこだわりを捨てる多様な人材確保の観点から、国内外の留学やギャップイヤーで自己研鑽等を経た学生の入社を容易にするため、新卒一括採用にこだわらず、通年採用、分野別採用等オプションも検討し、学生のニーズにも答えることで、
採用活動を優位に進めていくことができる。
悩みと工夫
採用者の関心が高い分野別に採用した場合も、入社後ずっと同じ分野や職務を担当させ続けるの?
【工夫1】経営環境の変化に応じて、各事業が必要とする人材を充足させる必要があるので、
一部の社員は、キャリアの途中で新たな職務領域に挑戦する必要がある。
なので、自ら職務領域の変更を意思表示できる体制、つまり主体的なキャリア選択が可能な体制を整える必要がある。
入社月は4月のままでいいの?
【工夫2】主体的なキャリア形成に向けて、学生が入社前に多様な経験を積むためにも、通年採用や多様な入社月の設定をする。
多様な経験とは、例えば、留学等を通じて多様な文化に触れる、企業やNPOでの活動を通じて社会のニーズに応える製品やサービスの提供経験などが考えられる。
学生は、どんな情報を求めているの?
【工夫3】学生は、企業の存在意義や事業機会、多様な人材を受け入れられる風土な等に関心が高いので、人的本経営の方針やその中で重視している施策の配信が考えられる。
特に、入社後の人材育成の仕組み、将来のリスキル・学びなおしの機会など、学生が将来享受できる人的資本について具体的に配信していくことが想定される。

(4)博士人材等の専門人材の積極的な採用

取組理由
博士人材のような高度な専門性と、自ら課題を設定し解決する独自の構想力を持つ人材を活用する施策の検討多様な人材確保の一環として、専門性の高い人材を取り込みことで、研究開発の高度化やイノベーションの創出につなげるため
悩みと工夫
すでに研究開発部門で、博士人材を採用しているんだけどな・・・
【工夫1】博士人材は、高度な専門性のみならず、深い思考力や、自ら設定した課題を高度な方法論を駆使して解決する独自の構想力を活かせる人材と考えられる。
そのため、研究部門に限らず、経営企画部門等においても採用の検討をする
専門性の高い人を採用しても、どうやって自社に活かすの?
【工夫2】博士人材の持つ専門性が高度なため、博士人材に自由な裁量を与えることが多い。ただ、それに伴い成果が、自社の付加価値につながらない恐れもある。
そのため、自社の事業や研究開発におけるニーズに合致するミッションを検討し、入社前から本人と協議する。
博士人材の報酬テーブルは、他の採用者と同じでいいの?
博士人材に期待する研究内容の深さや専門性の高さは、その他の人材に期待するものとは異なることから、専門人材の価値や希少性を踏まえて、十分魅力的な処遇を検討する
新しい分野の博士人材なんてどうやって探すの?
採用という形だけでなく、国内外の教育研究機関とネットワークを築いて、博士課程の学生やポストドクター人材との連携を検討してみる

Q4:【共通要素2】知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取組と工夫

取組一覧

(1)キャリア採用や外国人の比率・定着・能力発揮のモニタリング
(2)課長やマネージャーによるマネジメント方針の共有

(1)人事情報基盤の整備

取組理由
女性活躍の推進、多様な知識・経験を持ったキャリア人材、外国人材の採用多様な人材の掛け合わせによりイノベーションの創出やグローバル展開の加速が期待されるから
多様な人材が活躍しやすい風土が醸成できているか、人材の比率や定着・能力発揮の状況をモニタリング多様な人材が定着し、能力を発揮できる状況でなければ、獲得した人材が活躍できないから
悩みと工夫
多様性っていっても、どんな人材でもいいわけじゃないよね?
【工夫1】どんな知識・経験を持った人材が、どれくらい必要か、自社の経営戦略に照らして整理した方がよい
多様な人材を獲得していくのはわかったけど、すでにいる従業員に対しては何かアクションが必要?
【工夫2】既存の社員に対しても現状の課題を特定し克服していくことで、多様な能力が発揮できる環境整備を行っていく
採用しても周りが「お手並み拝見」的な感じにならないかな。
【工夫3】そうならないために、自社の経営目標として、周囲の社員が自然と手を差し伸べる文化を築いて、多様な人材が定着し、能力を発揮する状況を目指すべき。
【工夫4】あと能力が十分発揮できているか、社外取締役が検証し、取締役会で改善策を議論してみる
多様な人材を採用していけば、会社全体の風土も変わっていくのかな?
【工夫5】なによりも経営陣自身が、多様な知識と経験を持ち、その能力を発揮していれば、社員にもその重要性が認識されやすく、結果としてダイバーシティ&インクルージョンが尊重される文化へつながる
採用したけど能力が発揮できなかったらどうするの?
【工夫6】課題克服に向けて人事部門が支援し、必要なミッションの見直しや他部門への異動を検討

(2)課長やマネージャーによるマネジメント方針の共有

取組理由
課長・マネージャーが、全社にマネジメント方針を開示多様な人材を受け入れて組織を運営する能力を高めるため、優れた工夫を相互に学びあうため
悩みと工夫
多様な人材のマネジメントの評価で気を付けないといけないことは?
【工夫1】具体的に指示をしてマネジメントするスタイルでは、多様な知見・経験を活かすことは難しい。そのため、そのマネジメントスタイルを見直していくことが必要になるが、その過程では失敗はつきもの。
つまり、マネジメントの評価の際には、成果ではなく、その試行錯誤自体を評価する必要がある。
課長やマネージャーが課題を感じた時に、どうやってそれを克服すればいいの?
【工夫2】相談できる相手がいることが重要。ダイバーシティの高い他社を経験した課長やマネージャーから学び、日々のマネジメントに活かせるようナレッジの共有の基盤整備や勉強会の奨励を実施してみる
多様な人材のマネジメントは、課長・マネージャーだけで実施していくの?
【工夫3】直接的には、課長・マネージャーが実施するが、マネジメントが適切に実施されているかを確認し、問題があれば適切に支援するのが人事部門。
そのため、人事部門はエンゲージメントサーベイなどで状況を確認し、必要に応じてマネジメント方針の改善等を促し、定期的に観察を行う。

Q5:【共通要素3】リスキル・学び直しのための取組と工夫

取組一覧

(1)組織として不足しているスキル・専門性の特定
(2)社内外からのキーパーソンの登用、当該キーパーソンによる社内でのスキル伝播
(3)リスキルと処遇や報酬の連動
(4)社外での学習機会の戦略的提供(サバティカル休暇、留学等)
(5)社内起業・出向起業等の支援

(1)組織として不足しているスキル・専門性の特定

取組理由
経営戦略実現の障害となっているスキル・専門性を特定する経営環境の急速な変化により、求められるスキル・専門性も同時に変化している。つまり、社員もリスキル・学び直しが必要ということ
悩みと工夫
特定するスキル・専門性は、外部環境の変化に対応したものだけでいいの?
【工夫1】自社の競争力を高めるためには、自社の企業活動で培われた強みを支えるスキル・専門性も特定し、維持・向上に努めるべき
必要なスキル・専門性を定義して、現社員と照合して、必要なリスキルの質と量を把握するって、時間がかかりすぎる・・・
【工夫2】必要以上に時間を要しては意味がないので、精緻な把握にこだわらず、幹部へのアンケートなど極力簡易で・迅速性を重視して実行する
わざわざスキル・専門性ギャップを外部に開示する必要性ってあるの?
【工夫3】できるだけ定量的に発信することで、不足しているスキル・専門性を外部人材が知ることができ、逆にスキル・専門性を有する人に対するアピールになる

(2)社内外からのキーパーソンの登用、当該キーパーソンによる社内でのスキル伝播

取組理由
必要なスキルを有する人材のスキルを社内に伝播させる個人の自助努力によるリスキルには限界があるので、すでに持っているキーパーソンが主導してリスキルを行うことで、組織全体のリスキルの効率性が高まる
悩みと工夫
スキルの伝播について、誰が責任を負うの?
【工夫1】実際の伝播はキーパーソンが実施するが、責任は、経営陣やリスキルの関連部門のリーダーも責任を共有するべき。
リスキルが長期にわたる場合には、キーパーソンにずっと担当してもらうしかない?
【工夫2】キーパーソンに依存し続ける状況は避けた方がよいので、後継者を計画的に育成することを検討する
社員はいつスキルを学ぶの?
【工夫3】現職の内容にかかわらずリスキルに挑戦できる機会を提供するため、現職の労働時間の一定割合をリスキルに充てられるルールを設定する

(3)リスキルと処遇や報酬の連動

取組理由
リスキルがキャリアプランにインセンティブが働く報酬等の処遇に反映できる制度の見直し現職での多忙さからリスキルの優先順位が低くなっている可能性があるから
悩みと工夫
リスキル後の処遇や報酬を見直すだけでいいの?
【工夫1】社員に期待するリスキル後のポジションやミッションを明示し、新たなスキル・専門性の必要性、それを用いることで期待される成果に対する理解を進ませる
新しい報酬って、いままでのテーブルを参考にきめていいの?
【工夫2】現職で責任をはたしながらリスキルを行う社員の負担は考慮するべき。他社や市場で期待される報酬水準を参考にしながら、リスキル後の報酬が十分魅力的であるか検証して決める。
各自(個人)で学ぶ方がいいの?
【工夫3】リスキルに取り組む社員が孤立する事態を避けるために、学習の過程で理解が進まない社員が互いに学びあえるよう、理解を深める場を設けるべき

(4)社外での学習機会の戦略的提供(サバティカル休暇、留学等)

取組理由
一定期間職場を離れて、社員が社外で学習する機会を戦略的に提供する職場内の学習機会では確保できる時間や専門性の観点から不十分なケースがあるから
悩みと工夫
一定期間って、数か月ぐらいを検討すればいいの?
【工夫1】博士号を取得するような、留学等の数年間にわたる学習支援も考慮する
長期になると、その学びを社内で共有できるのは、さらにその後になってしまう・・・
【工夫2】留学中などに、社員が自ら学びを共有できる場を設ける
この制度で社員が不在になっているときの、人材は確保はどうすればいいの?
【工夫3】短時間正社員や、兼業・副業者の受入れを検討する

(5)社内起業・出向起業等の支援

取組理由
社内での起業や、出向という形での起業に挑戦させる会社全体の統括や、ビジネスモデルを創造する経験を積むことができ、またその経験を持ち帰ることで周囲の人材に良い影響を与え、組織単位でのリスキルが期待される
悩みと工夫
経験を積ませたい人を指名で選んでいいの?
【工夫1】社内起業や出向起業は、成果を上げるには、一定期間必要であり、また成功は保証されないため、自ら手を挙げた人材が挑戦できる仕組みにした方がベター。
起業のテーマは、会社が提供する?
【工夫2】社員に起業への挑戦を促す際には、新規事業と既存事業でシナジーを持たない場合も多いと認識し、社員の経験に投資するという発想が必要
起業は、一定の成果をミッションとするの?
【工夫3】起業を通じて得られた知識・経験を持ち帰ることを社員のミッションとして位置付け、起業中に得た知識・経験はどうやって自社に活かせるか社員と構想する機会を設ける

Q6:【共通要素4】社員エンゲージメントを高めるための取組と工夫

取組一覧

(1)社員のエンゲージメントレベルの把握
(2)エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント
(3)社内のできるだけ広いポジションの公募制化
(4)副業・兼業等の多様な働き方の推進
(5)健康経営への投資とWell-beingの視点の取り組み

(1)社員のエンゲージメントレベルの把握

取組理由
社員のエンゲージメントレベルを定期的に把握エンゲージメントレベルを向上させるには、そもそも今のレベルを知る必要性がある。またエンゲージメントレベルが低下した場合、その原因を分析し、レベルを上げる様々な取組を検討する必要があるから
悩みと工夫
エンゲージメントレベルの把握はする質問はどんな風に作るの?
【工夫1】目的別に質問の粒度を変えて作る。
会社全体や部門単位でのエンゲージメントレベル上の課題やその克服に要する施策を検討することを目的とする場合、社員のエンゲージメントレベルに影響を与えている要素を把握するため、質問を精緻に設計する必要がある
一方で、個人単位で、課長やマネージャーが迅速に改善を図ることを目的とする場合には、早期に課題を把握し、迅速に対応する必要があるので、簡易な質問票を活用して高頻度で把握する
エンゲージメントレベルをより向上させるにはどうすればいいの?
【工夫2】エンゲージメントレベルを把握した後に、組織としてどのように対処すべきかを検討し、コミュニケーションを社員と図ることで、社員の会社に対する信頼を維持し、高めることにつながる。また、個人へのフォローだけだなく、組織に共通する課題の抽出と経営陣への提起を行う担当者の設置をする

(2)エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント

取組理由
成長に適した、アサイメントを提案するキャリア志向に沿った適切なアサイメントは、よりエンゲージメントレベルを向上させ、その社員が持つポテンシャルや能力を最大限活かすことが期待できる。
また、企業の価値創造と個人的な自律的なキャリア開発も同時に達成することが可能。
悩みと工夫
どうやって適切なアサインメントをするの?
【工夫1】個人の成長に資する適切なアサインメントを行うためには、各社員が保有するスキル、過去の経験や成果等を平時から整理する必要がある。
エンゲージメントレベルが低い社員を回復し、会社のパフォーマンス向上に繋げるにはどうすればいいの?
【工夫2】エンゲージメントレベルが低い社員は放置すると離職するリスクが高まるため、会社のニーズと合致するアサインメントを検討する伴走者を任命する

(3)社内のできるだけ広いポジションの公募制化

取組理由
異動や退職ポジションについて、可能な限り公募を行う自分のキャリアを人事部門任せにするのではなく、自律的に考えるきっかけを作り、新たな職務領域に挑戦する機会を提供するため
悩みと工夫
積極的に異動してくれるかな?
【工夫1】挑戦意欲や移動後のミスマッチを防ぐためには、各ポジションに求められる要件を具体的に設定する
【工夫2】各部門がそれぞれのビジョンや職務内容、チームの魅力を社内に発信し、新たな仕事に挑戦しやすい環境を整備する
選考した人達にどんなフォローをすればいいの?
【工夫3】人事部が異動する人材には期待される役割を、また希望が叶わなかった人材にも、どういった点が評価され、再度挑戦するには何を改善すればいいのか丁寧に伝える
異動先でミスマッチが起きた場合にはどうすればいいの?
【工夫4】ポジションの前任者や所属部門・人事部門が支援を行い、改善が見込まれない場合には、再異動も検討できるようにする

(4)副業・兼業等の多様な働き方の推進

取組理由
副業・兼業を含む多様な働き方を選択できる環境の整備副業・兼業による知識・経験の蓄積や社員のエンゲージメントレベル向上は、中長期的に自社にとって有益となるため
悩みと工夫
いきなり、副業・兼業の整備と言われても・・・
【工夫1】社内の他部署との兼務や、別のプロジェクトへの参加を認めてみる。グループ内の他企業での副業、兼業を認めてみる。
兼業・副業の制度で重要なことは?
【工夫2】副業・兼業に寛容な風土の醸成を行うこと。その上で、社員と企業の双方が納得感を持てるように十分なコミュニケーションをとる。
企業と社員の双方にとって有益な副業・兼業をしてもらうにはどうすればいいの?
【工夫3】社員自身のリスキル・学び直しの観点から期待される効果を、事前に人事部門と社員間で検討する

(5)健康経営への投資とWell-beingの視点の取り組み

取組理由
心身の健康とWell-beingの視点を取り入れる社員の健康保持・増進によって、生産性や企業イメージを高められ、また組織の活性化や企業業績の向上が期待されるから
悩みと工夫
健康への施策って、どの企業も同じじゃないの?
【工夫1】健康課題は、業態や社員の構成で異なるため、自社に適した施策の検討が必要
社員の健康状態に関する情報発信はどこまですればいいの?
【工夫2】取組が、経営陣から現場まで連動・連携していることが求められていることから、社員や投資家など、社外のステークホルダーにも発信していくべき
Well-beingって言っても、みんな違うんじゃないの?
【工夫3】一人一人の価値観や働く目的は異なるので、意味するところも人それぞれ。だから、中長期的な企業価値の向上につなげる観点からWell-beingを捉えて、それをを高めるために試行錯誤するしかない。

Q7:【共通要素5】時間や場所にとらわれない働き方を進めるための取組と工夫

取組一覧

(1)リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進
(2)リアルワークの意義の再定義と、リモートワークとの組み合わせ

(1)リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進

取組理由
業務のデジタル化時間や場所に囚われない多様な働き方のニーズにこたえることができる。
悩みと工夫
資料のデジタル化だけでいいんですか?
【工夫1】資料だけでなく、コミュニケーションツールもデジタル化に取り組むべき。
稟議申請・決裁を紙で運用しているので、出社せざるを得ないのですが。。。
【工夫2】申請・承認についても、関係者が出社しなくても決裁が完了するような仕組みづくりが必要
逆にリモートワークできない事情がある人達は?
【工夫3】多様な働き方を認めるという観点からは、例えばサテライトオフィスの整備や、シェアリングスペース等を活用してみる
リモートワークで、どうやって管理すればいいの?
【工夫4】メンバーとの関わり方は出社の時とは異なるため、リモートワークを前提としたマネジメントの方針や業務プロセスを検討する。

(2)リアルワークの意義の再定義と、リモートワークとの組み合わせ

取組理由
リアルワークの意義の再確認リモートワークの推進により、イノベーションが起こりにくくなったというデータがある。
そのため、多様な働き方の一つであるリモートワークとリアルワークを戦略的に組み合わせることで、継続的なイノベーションの発生を維持させるため。
悩みと工夫
リモートワークを希望する人に、リアルワークを依頼したい場合どうすればいいの?
【工夫1】どちらを主軸にするかは、各社の判断になるが、リアルワーク依頼する場合には、リアルワークの必然性や期待される効果を丁寧に説明する。
【工夫2】チームメンバーが一斉にリアルワークを行う日程を定めて、メリハリをつける。
リモートワークだと、業務の話しかしなくて、社員の視野が狭くならないか?
【工夫3】そのリスクはあるので、異なる部門の社員同士がコミュニケーションする場などを意識的に設定することが望まれる。

最後に一言

今回は、「人材版伊藤レポート2.0」の【5つの共通要素編】ということで、「取組」とそれに対する「工夫」を見てきました。

いかがでしたでしょう。

【3つの視点】も併せると、なかなかボリュームがありましたね。

読んでもらうとわかると思いますが、たぶんCHROとして施策を本気で考えようと思った時には、一つ一つの工夫に関してもう一歩踏み込んだ内容が欲しいと思うかもしれませんが、考えるべき視点を網羅的に記載してくれているので、未検討事項を確認するという意味でグッドなのかもしれません。

ただ、何から手を付けていいかわからないという企業にとっては、気を付けなければならない点を最初から知ることができるので、非常ありがたいレポートだと思います。

そして、私としては、むしろ人事とは普段関係ない方こそ、

これからキャリアを自ら選択していく世界になることを想像することができるレポートだと思ってます。

これを機に、将来のキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。

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