「中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コードの実践の手引き」に掲載されている中小企業が、どんなDXを推進しているのか紹介してます。
・中小企業のDXって、どんなことしているのか知りたい方
・最近DXで活躍している企業を知りたい方
・「中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コードの実践の手引き」の内容をざっと知りたい方
この記事の目次
「中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き」って何?
中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き(以下、手引き)は、一言で言うと、
中堅・中小企業が実践しているDXの事例集
です。
もともと、DXの事例集としては、DX銘柄に選定された企業について開示がされています。
「DX銘柄2022」企業選定レポート
ただ、DX銘柄企業は、大企業ばかり。
多くの企業は、非上場の中小企業であり、大企業の事例では、DXが身近に感じられにくい可能性がある
そこで、中小企業の好事例を紹介することで、中小企業社にもDXを身近に感じてもらい、DXに取組んでもらいやすくするもの
本記事で紹介する事例一覧
手引きには、13社掲載されていて、本記事では、7社紹介してます。
残りの6社は、こちらの記事で紹介してます。
気になる企業だけ、確認するのも一つ。
(出典:中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き(一部加筆))
No7:ハッピー(サービス業)
会社概要
ハッピーさんは、衣服のメンテナンスをする「ケアメンテ」サービスを提供している会社。
クリーニングに出しても落ちなかったシミや汚れ、さらには、形状まで、元に戻すことができる技術がここに。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・自社の価値を創出ためにエンジニアが必要 | ・創業時から、経営理念や経営ビジョンを明確に示し、情報発信をし、共感・賛同してくれるエンジニアを雇用 |
・デジタルを武器に、新しい価値のサービスモデルを創出する | ・衣服一点に対して、その形状や材料等の要素を150種・3,000項目に分解し、情報をデータベース化 |
・暗黙知で属人化する業務は無くしたい | ・自社開発の「ハッピー電子カルテシステム」により、生産、販売、会計税務、代金回収、労務管理、運輸ロジスティクスなど、直接的・間接的な全業務を一元化 |
ハッピーでは、DXの本質は、ただアプリケーションを入れることではなく、「デジタルを武器に、新しいサービスの創造に力を入れること」としている。その言葉どおり、自社でシステムを独自開発し、そのシステムの特許を取得しているのだ。独自の技術を創造し、そして守りながら、また新しいサービスの創造に力を入れている。
プラスα
ハッピーさんの、すごさは、この動画を見た方が早いのです。
1分ぐらいの、Before →After の動画
【いい物を長く大切に】クリーニングの駆け込み寺「ハッピーケアメンテ®」であなたのファッションライフが変わります。
【会社のコンセプト】
使い捨てから使い続ける価値を提案。大切な衣服を長く楽しむ新習慣「ケアメンテ」
まさに、このコンセプトを実現しています。
毎年大量の衣服が廃棄されている現状において、いいものを長く使う・着るという、SDGsの観点からも、ものすごく価値のあるサービスだと思います。
電話やメールカウンセリングもやっているようなので、利用してみてはいかがでしょうか。
No8:サンコー(ねじ・精密部品製造・販売業)
会社概要
社名 | サンコー株式会社 |
本店所在地 | 香川県高松市 |
業種 | ねじ・精密部品製造・販売業 |
設立年 | 1961年 |
従業員数 | 230名 |
国内外におよそ800社にも及ぶ協力工場や関連会社、工事部門を持ち、ねじ周辺関連製品を製造しているだけでなく、商社機能も有する、サンコーさん。
四国で初の、DX認定事業者。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・基幹システムの老朽化 | ・基幹システムをベンダと協力しながら開発 |
・営業部門の社員が、営業活動にほとんど時間が取れていない | ・倉庫管理システム(WMS)を実装し、倉庫内の一連の作業を一元管理 |
・コロナ禍により、対面での打ち合わせに制限が | ・社内コミュニケーションの円滑化のため、グループウェアやウェブ会議システム等のデジタルツールの利用 ・生産性向上のため、文書管理ツールやナレッジデータベースを各部門に導入し |
サンコーさんが求めているのは、「人の幸せを作るwellbeing」だという。そのための取組の一つが、このDX対応なのだ。
プラスα
すこし古いですが、社長のインタビュー記事があったので、参考までに載せておきます。
より深く広く 「本業のねじ」を!
ものすごい量の在庫を管理することが、何よりも大事なことが分かる。
特注品の在庫が増えすぎると、いきなり使わなくなったときに損を被る。だから、ジャストインタイムが必要不可欠。
だけど、それが難しい。だからこそのWMSだったんでしょうね。
No9:スーパーワークス(技術サービス業)
会社概要
社名 | 株式会社スーパーワークス |
SNS | |
本店所在地 | 岡山県岡山市 |
業種 | 技術サービス業 |
設立年 | 2015年 |
従業員数 | 2名 |
スーパーワークスさんは、建設現場の図面を3DCGで視覚的に表現できるアプリ「ネットモケイ」や、建設業の営業や設計、社内情報をまとめてクラウド化する「PlaceOn」を提供。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・図面だけだと、伝わりにくく、工務店と施主間で認識に齟齬が | ・2次元の図面から3DCGモデルを作成するアプリ「ネットモケイ」を開発 |
・建設現場に関わる人が、必要な情報にアクセスでき、情報の属人化を防ぐことはできないか | ・営業や設計、社内情報をまとめてクラウド化する「PlaceOn」を開発 |
今回は、自社内ではなく、建設現場にDXをという視点で考えてできたことでうまれたサービスの事例
プラスα
「ネットモケイ」も「PlaceOn」もB to Bのサービスイメージですが、
手書きの図面を、3DCGモデルに落とし込んでくれるサービスもやってます、しかも無料‼
「ネットモケイfree」
是非、家を建てようと思っている方、使ってみてはいかが。
No10:太陽都市クリーナー(廃棄物処理業)
会社概要
社名 | 株式会社太陽都市クリーナー |
SNS | |
本店所在地 | 広島県府中市 |
業種 | 廃業物処理業 |
設立年 | 1964年 |
従業員数 | 28名 |
皆さん、廃棄物処理業ってイメージ湧きます?
太陽都市クリーナーさんは、産業廃棄物を回収サービスだけでなく、配管の清掃や、下水処理施設の浄化槽の保守・点検・清掃、あと一般家庭のトイレや作業現場のトイレのし尿の汲み取りをメインでやっている会社。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・事務所とほとんど事務所にいない現場スタッフとの連携がうまくいかない | ・グループ間でのチャット機能やファイル共有、カレンダーやドキュメントの編集・共有などをチームで行うことができる、「クラウドサービス」を導入 |
単純にクラウドサービスの導入といっても、当然そこには、新しいもの自体への抵抗があったという。
例えば、朝会をみんなすぐそばにいるのに、敢えてオンライン朝礼をしたりと「遊び」により、新しいものを馴染ませた。
まさに「工夫」である。
プラスα
手引きでは、「遊び」については、オンライン朝会しか書いてなかったですが、TechTrendsの社長インタビュー記事では、他にもやっていたことが書いてあったのでご参考までに。
・車で10分くらいのところに、テレワーク体験ルームを設置
・スマートスピーカーを設置して、音楽を聴いたり、お天気を聴いたり
・雑談チャットであえて、仕事以外の話で盛り上がる …etc
DXの取組をすると、反発する人がいるのが実態でしょう。そこで必要なのが、「工夫」なんでしょうね。
その「工夫」の一つが、太陽都市クリーナーさんでは「遊び」だったんですね。いやー、お見事。
No11:東洋電装(制御盤製造及び技術サービス業)
会社概要
東洋電装さんは、制御盤の設計製作・改造・デザインなどを手掛ける、一品一様のものづくり企業である。
「小ロット品でも、大量ロット品と同じような納期、同じようなコストで、同じような生産性を上げられるような生産方法はないか?」
この悩みから、「DX工場」を設置するまでに至るDX推進企業である。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・高度な技術を有するエンジニアが誰でもできる業務を対応している | ・工程の標準化 |
・高度な技術を有するエンジニアが誰でもできる業務を対応している | ・工程の細分化 →「ある程度の技術力があればできる作業」と 「高度な知識や技術を持つ職人のでみができる作業」に工程を分類 ・細分化した各作業のデジタル化 →工場内に設置したカメラで作業者の動きを記録し、作業状況に関するデータを収集・見える化 |
この取り組みの結果、銀行という堅いイメージの会社でも、経営陣が迅速な意思決定を行い、失敗を恐れずに変革にチャレンジすることが可能になったというのです。
プラスα
一品一様の業務にDXのメスを入れた事例。多くの中小企業、とくに製造業において参考になる取組だと感じた。
・ある程度の技術力があればできる作業と高度な知識や技術を持つ職人のみができる作業に分類
・分類した作業のデジタル化
個々の案件毎に業務内容が違うから、DXは無理と最初からあきらめず、とりあえず、ある程度の技術力でいけるものと、匠の技が必要な2つに分けて、ある程度の技術力であれば、デジタル化で一定程度対応が可能なものがあるということを知れただけでも、ものすごい価値がある事例ではないだろうか。
IOTNEWSの「東洋電装 35.6%の無駄を削減した「DX工場」をオープン」にはもう少し詳しめに記載されている。
気になる方は、深堀してはいかが。
No12:松本工業(自動車部品・金属製品等製造業)
会社概要
社名 | 松本工業株式会社 |
本店所在地 | 福岡県北九州 |
業種 | 自動車部品・金属製品等製造 |
設立年 | 1966年 |
従業員数 | 371名 |
松本工業さんは、九州の自動車メーカー向けに、自動車部品を製造している会社。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・自社の状況を正確に把握する、客観的なデータが全くない | ・RFIDというICタグを用いた生産管理システムを開発 →製造不良の発生条件(気温、原材料温度、原材料ロット等)作業のネックとなっている部分の原因究明、改善策の検討を実施 |
・工場内の部品や完成品の運搬など、付加価値は生まないが、重労働で大変 | ・「工場無人搬送システム」を開発し、部品ストアから加工工程を行う作業者の近辺まで自動で部品を共有できるようにした |
松本工業さんは、「スマートファクトリー」化を目指している。
ただその根底には、「働きやすい工場」にすることがあり、それに向けて出たアイディアが、上記取組なのである。
プラスα
「働きやすさ」という点において、松本工業さんは、DXのみならず、「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」にも認定されている。
さらに最近では、脱炭素化の取組にも注力しており、溶接からでるCo2をなくすために、溶接レス結合方法Jmecを編み出し、特許を取得しているという
池尻和佳子のトコワカで、社長がJmecについてすこし説明しています。Jmecが気になる方は是非。
従業員にも、顧客にも、そして地球にも付加価値を、まさにSDGsの考えに沿って行動している企業。
No13:ヒサノ(一般貨物自動車運送事業・機械機器設置工事業業)
会社概要
ヒサノさんは、精密機器の輸送・設置や、ピアノなどの運搬・調律、倉庫業と、多岐にわたるサービスを展開。
ちなみに、ヒサノさんも、「働きやすい職場認証」、「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」の認定を受けている企業です。
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・繁忙期の配車スケジュールを手作業で管理していたので、オーバーブッキングなどにより、トラブルが多発 | ・配車スケジュールをクラウド化し、稼働状況を一覧化 →ブラックボックス化していたスケジュール管理が、誰でもわかるようになった |
これを見ただけだと、システム導入をしたんだねと思うかもしれない。
結論はそうではあるが、これをやり遂げるということは、
現状の作業をフローに落としていき、見える化することで、ボトルネックが何かを突き止め、そして、経営者が思い描いたビジョンを実現していく
この地道な作業を、愚直にやり抜く必要があるということ。
そして、それはどの企業でも同じであることがわかる、汎用性のある知見を教えてくれる事例。
プラスα
ヒサノさんは、福岡県の古賀に総工費10億円の半導体機器などの精密機器向け大型倉庫を建設、22/7月より稼働開始。
その理由を、こちらのYouTubeで社長自身が説明されてました。
幸せになる、お仕事探し。熊本で見っけ!【熊本市公式】
・2024年末までに、熊本に台湾のTSMCがソニーと協働で、半導体製造工場が建設
・九州に、サプライチェーンの素材・部品メーカーも集まってくるので、輸送需要が増加
ビジネス面からも、楽しみな企業ですね。
最後に
手引きにおいて、No12で紹介した、松本工業さんの副社長の言葉がこれである。
DXを推進するにあたり、現行の作業を単純に電子化してもメリットはない
現在の業務のやり方に対して、徹底的に議論し、課題を整理した上で、業務効率化を実現していくことが重要なのだという。
DXというと電子化していくことが前面にでてしまうけど、電子化は手段にすぎず、今やっている一つ一つの作業の意味に対する理解を高めていくことがDXのキモなのかもしれないですね
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