【DX Selection2023】が選出されましたね。
本記事では、選ばれし中小企業が、どんなDXを推進しているのか紹介してます。
・最近DXで活躍している企業を知りたい方
・「DX Selection2023」ってなにか知りたい方
・中小企業のDXって、どんなことしているのか知りたい方
この記事の目次
「DX セレクション」って何?
DX セレクションは、一言で言うと、
中堅・中小企業が実践しているDXの優良事例を発掘するためのセレクション
です。
もともと、上場企業は、「DX銘柄」というセレクションがあるのですが、
DX銘柄企業は、大企業ばかり。
多くの企業は、非上場の中小企業であり、DXが身近に感じられにくい・・・
ということで、DXの取組活性化のために、中小企業にフォーカスをしたセレクションを実施しているのです。
【DX Selection2023】に選ばれし企業達
今年の【DX Slection】に選ばれし企業は、全部で20社(昨年は16社、4社増)。
「DXセレクション2023」選定企業レポートに掲載されています。
グランプリ:1社、準グランプリ:2社、審査員特別賞:1社、優良事例選定:16社
本記事でご紹介するのは、グランプリ、準グランプリ、審査員特別賞を受賞した4社。
気になる企業だけ、確認するのも一つ。
【グランプリ】
都道府県 | 企業名 | 推薦ラボ |
岡山県 | フジワラテクノアート | 岡山県IoT推進ラボ |
【準グランプリ】
【審査員特別賞】
福岡県 | ゼムケンサービス | 北九州市IoT推進ラボ |
No | 都道府県 | 企業名 | 推薦ラボ |
1 | 北海道 | 池田食品 | 札幌IoTイノベーション推薦コンソーシアム |
2 | 秋田県 | 田代製作所 | 秋田県IoT推薦ラボ |
3 | 秋田県 | 小西タイヤ | 秋田県IoT推薦ラボ |
4 | 山形県 | 三井屋工業 | 山形IoT推薦ラボ |
5 | 山形県 | 舟形マッシュルーム | 山形IoT推薦ラボ |
6 | 群馬県 | スバル工業 | 富山市IoT推薦ラボ |
7 | 新潟県 | テラノ精工 | 長岡市デジタル推進ラボ |
8 | 新潟県 | 日本メッキ工業 | 柏崎市IoT推薦ラボ |
9 | 富山県 | ケーシーアイ・ワープニット | 富山県IoT推薦ラボ |
10 | 長野県 | 共進 | 長野県IoT推薦ラボ |
11 | 静岡県 | 宮川工業 | 静岡県IoT推薦ラボ |
12 | 大阪府 | ブリッジ・ソリューション | 大阪市IoT推薦ラボ |
13 | 大阪府 | Mountain Gorilla | 大阪市IoT推薦ラボ |
14 | 岡山県 | 両備ホールディングス | 岡山県IoT推薦ラボ |
15 | 佐賀県 | ソロン | 佐賀県IoT推薦ラボ |
16 | 佐賀県 | 中野建設 | 佐賀県IoT推薦ラボ |
そして、最初にお伝えしておきます。
このレポートなんですけど・・・
正直これだけ読んでも、どんな取り組みをしたのかよくわからないんですよね・・・
その他の方法としては、表彰式のスピーチ動画で具体的な取組をすこし説明してくれているのでそれを見るか、本記事で(把握できた範囲でですが・・・)、少し記載しているのでご活用ください。
ただ、動画はグランプリ・準グランプリ・審査員特別賞の4社のみで、それ以外の受賞企業はないです・・・
もし、その他の中小企業のDX事例を知りたい方は、
「中堅・中小企業等向け デジタルガバナンス・コードの実践の手引き」でも紹介されているので、
気になる方は、こちらの記事をどうぞ。
グランプリ:フジワラテクノアート(醸造機械・食品機械・バイオ関連機器製造業)
会社概要
社名 | フジワラテクノアート |
SNS | |
動画サイト | YouTube |
本店所在地 | 岡山県 |
業種 | 醸造機械・食品機械・バイオ関連機器製造業 |
創業 | 1933年 |
グループ総従業員数 | 145名 |
フジワラテクノアートさんは、味噌・しょうゆなどの製造における麹づくりの老舗機械メーカー
機械はすべてフルオーダーメイドで、市場シェア80%。海外は、27ヶ国へ納品実績があり。
そんなフジワラテクノアートさんのITレベルは、
2018年時点では、ほとんど紙とExcelで管理していたレベルが、
3年で21個のITツールとシステムを導入、5年でグランプリを受賞するレベルに成長した企業。
すごすぎ。
グランプリ受賞動画
グランプリ受賞の際に、どんな取り組みを実施したのか、社長自ら説明している動画は、こちら。
【DXセレクション2023】グランプリ・株式会社フジワラテクノアート
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・創業90年の老舗企業で、ITリテラシーは高くない | ・理念の明確化:醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業へ →「開発ビジョン2050」を策定 →各部ごとに、あるべき姿を整理 ・DX推進委員会メンバーがベテラン社員に何度も丁寧に説明 ・酒造りの高度な技術伝承に貢献する AI システムを開発 |
・各従業員が、DXへの取組を自分事として捉える | ・個人別5か年ビジョンの作成 ・社内ベンチャー企画コンテストの開催 |
・組織が変化していくなかでの、マネジメント方針 | ・マネジメント方針を、明文化し、「マネジメントウェイ」という冊子を配布して、共有化 |
フジワラテクノアートさんは、2023年に操業90周年を迎える、伝統的な麹づくりの全自動無人化を実現した醸造機械のトップメーカー。
で、関連記事を読んでいて、麹づくりという高度な技術をAI化したのかなぁなんて思っていたのですが・・・
浅はかでしたm(_ _)m
神髄はこちら。
「開発ビジョン2050」が目指している、次世代醸造プラントシステムは
システムが自ら考え、システム同士が自発的に協働する「知能化した醸造プラント」
こちらの内容は、知的図鑑さんとのコラボ記事に記載されています。
AI開発とさりげなく書かれている本当の目的は、こっちにあったんだと。
本当のすごさは、むしろ技術の伝承以上にビジョンにあるのかと、感じた次第です。
プラスα
その他にもどんなDXの効果があったのか気になりますよね。
具体的な目標に対する結果はこちら↓
具体的な目標 | 結果 |
・調達業務効率化と紙 50%削減 | ・月 400 時間工数削減と紙 90%削減 |
・棚卸業務効率化 棚卸作業にかかる時間(2週間→1 日程度に短縮) | ・棚卸 1 回の時間 2 時間程度に ・棚卸回数が年 1回→ 年6 回に、在庫管理の精度向上 |
・RPA による月 30 時間程度の事務作業削減 | ・月 50 時間以上の事務作業削減とミス削減 ・システム間連携に活用中 |
・杜氏の麹づくりをサポートし、酒造りの高度な技術伝承に貢献する AI システムを開発 | ・Python をゼロから学習し、開発に成功。 |
・社内デジタル人財の育成 | ・2018 年 1 人→2023 年のべ 21人に増加しDX 内製化に成功 |
月400時間の削減って、(8時間×50日 → 2名×8時間×25日)
だいたい、月2名分の作業ってことでしょ‼
まじですごい。
あと、会計士的には、棚卸を年6回可能にしたというのは、本当に驚き。
むしろ、回数を増やすからこそ、在庫管理の精度が高まって、さらに時間がかからなくなるんだね。
業務の効率化ってのは、知恵と技術を組み合わせで、いくらでも可能になるのかと改めて感じさせる結果ですね。
見習わなくては…
参考
・フジワラテクノアートの取組紹介
・フジワラテクノアートのDXの推進について
・豊かな食文化を支える、知能化する醸造プラント 次世代醸造プラントシステム
準グランプリ:土屋合成(プラスチック製品製造業)
会社概要
社名 | (株)土屋合成 |
本店所在地 | 群馬県富岡市 |
業種 | プラスチック射出成形品加工メーカー 精密機構部品・時計の外装部品等を製造 |
設立年 | 1972年 |
従業員数 | 82名 |
土屋合成さんは、文房具(PILOT等)のプラスチック部品を製造しているメーカー。
ただ取り扱う商品は、文房具にとどまらず、ナースコール部品や、自動車部品と様々
土屋合成さんのDXの目的はこちら
24時間停まらない工場から、24時間停まらない自動化された工場へ
ここでの驚きは、すでに24時間停まらない工場であったこと…
そして、それは「人」の頑張りにより、停めさせなかったという・・・
例えば、緊急時に備えた、工場への泊まり込み。
やれますか、皆さん。泊まり込み。
そう、こんな働き方はできないという、社長の思いがスタート。
DXが、人の苦しみを解放してくれる一例。
準グランプリ受賞動画
グランプリ受賞の際に、どんな取り組みを実施したのか、社長自ら説明している動画がこちら。
DX Selection2023 準グランプリ受賞動画:(株)土屋合成
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・「検査・箱詰め」へ細かな対応が必要 | ・「検査・箱詰め」をロボットにより自動化 |
・トラブルに備えて、工場への泊まり込み | ・ネットワークカメラを設置し、スマートフォンで工場内の状況確認を可能に |
土屋合成さんの取組ってこれだけ?って思った方
DXって、何のためにやっているのか、もう一度思い出してみてください。
「作業時間」を「知的な時間」へ転換
ですよね。
土屋合成さん、その時間を新製品の試作に充て、高精度な部品加工に成功。
結果、売上高が社長就任時(2006年)の6.3倍に
しかも、驚いたのは、人が足りなくなるからDXを推進した結果
従業員が社長就任時の2.8倍に
むしろ、人材が集まっているのです
これは、多くの企業が考えさせられる結果ではないでしょうか。
プラスα
とはいっても、DXがわかる人は社内にはいないという企業も多いでしょう。
土屋合成さんは、群馬県立産業技術センターの所長と出会ったことで、DX化が加速したと(稼ぐ力の鍛え方2020(経済産業省 関東産業経済局))。
この話もためになりますよね。
分っている人がみれば、こうやればいいんじゃないというアイディアを、社内で導きだすハードルの高さ。
DXを自分なりに勉強しながらも、外部の相談できるひとを探す時間を確保することも大事なんだなと
多くの企業に当てはまる事例かなと感じました。
本のご紹介
土屋合成さんの取組が掲載されている本、やっと見つけました。
こちらの本、具体的な取り組み事例が、土屋合成さん以外も沢山掲載してくれています。
ちなみ、どこかというと、
・「デジタルガバナンス・コード実践の手引き」に掲載されているヒバラコーポレーションさん(塗装業)
・「稼ぐ力の鍛え方2020(経済産業省 関東産業経済局」に掲載されている、山口製作所さん(プレス加工)
・「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書」に掲載されている木幡計器製作所さん(圧力計機器販売)
etc
と、DXトピック企業ばかりです。
(Selectionレポートもこの本ぐらい、具体的に書いてくれるといいなぁ・・・)
あと、個人的には、RPA導入に関する取組も載っているので、RPAの取組を知りたい方にもおすすめ。
是非どうぞ
参考
・「デジタル技術で生産性改革」群馬県立産業技術センター~こんなことやってますシリーズ~with (株)土屋合成 |産業|群馬産業技術センター|群馬県
・稼ぐ力の鍛え方2020(経済産業省 関東産業経済局)
準グランプリ:グランド印刷(印刷業)
会社概要
グランド印刷さんは、インクジェットプリンターを使用した幕・シート・壁紙などへのデジタルプリントなど、販促物中心の印刷会社さん。
準グランプリ受賞動画
2009年の東京へ進出から、いままでのどのような取り組みを実施してきたか、社長自ら説明している動画は、こちら。
DX Selection2023 準グランプリ受賞動画:(株)グランド印刷
DX対応
時期 | 取組 |
・2009年 | デジタル化 ・グーグルのグループウェア ・Evernote ・Dropbox |
・2011年頃 | ・Chatwork導入 →社内メール廃止 |
・2013年頃 | ・基幹システム運用開始 (受注管理/生産管理/請求書発行/入金処理/資材発注等) |
・2015年頃 | ・マーケティングシステムを構築 (顧客管理/見込み客管理/Webサイト連携/顧客行動履歴/日報管理等) |
・2018年頃 | ・工場システム構築 (在庫管理/工程管理/案件管理等) |
・2021年頃 | ・経理システム構築 (勤怠管理/請求書自動発行/注文書自動発行) |
※上表の時期は、表彰式で使用された「これまでのDXの歩み」のスライドをもとに、Kazuが独断と偏見で記載しているため、大変申し訳ないですが正確性は不明です。ご容赦願います。
上表の通り、グランド印刷さんは、最近DXをはじめた企業でなく、2009年の東京進出を皮切りに、ずーと続けてきた企業。
社長は動画で、2009年の東京進出以降、事業を拡大するには、ITを駆使しないとムリと感じたそうです。
そこから、徐々にレベルアップして、自社のシステム構築をしちゃうレベルまで
やろうと思えば、ここまでやれるという事例。
また、グランド印刷さんの事例をみて感じたのは、
・早い時期/人数が少ない時期にこそ、DXを推進しておけ
なんだなと。
Selection2022/2023の社歴が長い企業の多くで、ベテラン社員への配慮が見受けられます。
想像ですが、このベテラン社員への対応が、実務上すごく大変なんじゃないかと。
だから、ベテラン社員が少ない時期に、DXを推進するのが、スピードを持ったDXが可能なのかなと
あと、社長自らDXを推進するのが重要なのかも。
社長が実践→組織としてDXを求めている→みんながやる
グランド印刷さんは、受賞時点で従業員が約50名、
DX開始初年度(2009年)はもっと少なかったはず。
そんな少人数のときから、DX化を推進。
この人数が少ない時期にDX可能な組織になっておけば、人数が増えても変化に対応できる柔軟性を持ち続けたまま、組織を拡大させることが可能なのでは
と感じた次第です。
プラスα
グランド印刷さんは、10年以上DXを進めてきた経験を活かし、「特命DX係長」というDXプロデューサー育成スクールもてがけています
DXで世の中をもっと楽しく、もっと豊かに
係長だけに、福岡県出身の芋洗坂係長がイメージキャラクターです。
ちなみに、CM動画はこちら。
あと、私が知らなかっただけですが、Amazonで、看板って売ってるんですねw
こちら、グランド印刷さんの看板↓
もしよければどうぞw
審査員特別賞:有限会社ゼムケンサービス(特定建設業)
会社概要
社名 | (有)ゼムケンサービス |
SNS | |
本店所在地 | 福岡県北九州 |
業種 | 建設業 |
従業員数 | 9名 |
ゼムケンサービスさんは、設計・施工をおこなう所謂、工務店さん。
社長いわく、建設現場は、やはり男社会。
そんな環境が嫌で離れてしまう、能力ある女性たちが、イキイキと活躍するためにDXを導入。
審査員特別賞受賞動画
森田社長の熱いスピーチ、こちらからどうぞ。
DX Selection2023 審査員特別賞受賞動画:(有)ゼムケンサービス
DX対応
課題・目的 | 取組 |
・2006年~2014年 | ・社長からのコメントメモを集積 →Z’m kem赤本の作成 ・ワークシェアリング開始 |
・2015年~2018年 | ・業務の標準化 ・ITツールの支給(スマートフォン、タブレット) |
・2019年~2020年 | ・AI+ARマネジメントツール開発開始 →現場の映像を、事務所の熟年担当者が見ることで、危険個所、重点管理箇所などをコメント可能に |
・2021年 | ・DIY FRIENDS開発開始 →プロ・アマ関係ない、女性建築家たちの交流の場、学びの場 |
ゼムケンサービスさんの従業員数は、9名。
9名ですよ。
そんな限られた人数で、能力を最大限活かす方法としてたどり着いたのが、AI開発なのでしょう。
開発した「AI + ARマネジメントツール」は早稲田大学産学融合国際戦略研究所と共同開発したツール
IPadで建設現場の映像をとると、
・AIによる気づき事項
・現場から離れた場所にいる上司からのコメント
・専門用語の説明
・建設の工程別に、ゼムケンサービスのノウハウが詰まったチェックリスト
などが表示されるようです。
人数が少ない企業こそ、限られた時間の活用方法が重要。
最大限有効活用することで、価値の最大化が可能に
その結果、会社も働く人もハッピーに
皆様、驚くなかれ。
ゼムケンサービスさんの、22/7期の一人当たり売上高は、ほぼ6,000万円です‼
想像してみてください。
皆さんがフリーランスになったとして、6,000万円の売上作れますか?
プラスα
ゼムケンサービスの社長は「けんせつけんちく女学校」も運営しています。
活躍できる場だけでなく、スキルを身に付けたい女性たちが成長できる場も、社長自ら提供しているのです。
そのスキルを活かせる場の一つが、ゼムケンセサービスさんなのでしょう。
好循環が期待できますね。
それにしても、北九州が熱いですね。
・2022年:リョーワさん、
・2023年:グランド印刷さん、ゼムケンサービスさん
と3社目の受賞ですね。
参考
最後に
こうやって、1社ずつ調べていると、その企業に愛着が湧いてきて、実際にその会社に入ってみたくなるんですよねぇ~。
気になった企業は、調べてみるのもありかも。
勿論それだけで、転職してしまうのは危険ですが、話を聞いてみるのも1つ。
DXに取り組んでいる企業は、現在進行形で増えていると思います。
紹介企業は地方が多いので、身近なDX企業を知りたい方は、DXに詳しい転職サイトの人に話を聞くという方法もあり。
別に転職しなくても、情報を知れればいいわけなんで、利用しない手はないと思いますよ。
一度聞いて見てはいかが。
関連リンク